英国のプルトニウム長期管理戦略 「MOX利用」に向け協議

英国のエネルギー気候変動省(DECC)は7日、国内で保管している民生用プルトニウムの長期的な管理方法を探るため、公開協議を開始した。

現在考え得る3つの選択肢について、5月10日まで国民から意見を聴取する計画だが、政府としては「MOX燃料として再利用するオプションが最も有望」との予備見解を提示しており、これに対する国民の理解を促す意図があるとしている。

英国には現在、民生利用により分離抽出したプルトニウムが112トン存在し、このうち約28トンは海外顧客の所有。ほとんどが1950年代からセラフィールドで実施してきた核燃料の再処理によるもので、英国分の大部分は原子力デコミッショニング機構(NDA)が保有している。

DECCが公開した資料によると、これらのプルトニウムは専用施設で安全に保管されている。しかし、昨年5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議で国際コミュニティが10年ぶりに放射性物質の管理についていくつかの具体勧告を出したこともあり、英国がプルトニウムの核拡散上のセンシティビティを認識し、その戦略的・長期的な管理の準備に取り組んでいることを対外的に示す意味合いがあると説明した。

現時点で考えられる選択肢として、DECCは(1)長期貯蔵の継続(2)固化後に地層処分(3)MOX燃料に加工し、新規および既存の炉で再利用――を列挙。(1)の利点については実行し易く、現在も実際に実施している点を挙げた。一方、欠点としては核不拡散上および保安上のリスクが高く、将来の世代に継続的な管理という重荷を残すとしたほか、貯蔵所が廃止措置を迎える頃、さらに難しい決断を迫られることになると指摘している。

(2)に関しては、様々な固化技術が利用可能であり、既存のセメント固化は少量のプルトニウム処分には有効だとした。しかし、すべてのプルトニウムを合理的かつ高い信頼性をもって固化できる技術は今のところ存在せず、どれもまだ研究途上。また、全量の地層処分には処分場の大幅な拡張が必要であり、そのコストは膨大だと強調した。

一方、政府が予備的見解として提案している(3)案については、難点として既存のセラフィールドMOX製造工場(SMP)の稼働率が低いため、多額の経費を投じて新たな加工工場を建設する必要がある点を挙げた。しかし、MOX燃料への加工は米ロがすでに余剰核兵器プルトニウムの転換で実証済みの技術であるため、新たな大規模加工工場も合理的な時間スケールで建設が可能。

また、MOX燃料そのものに転換経費を相殺するだけの価値が内在するほか、テロリストにとっては価値が低く保安上の不安が少ないこと、使用済みMOXの容量が小さくなるため最終地層処分場の規模も小さくなる利点があるとしている。

以上のような論理から、政府としては今回、(3)案を「最も有望と思われる予備的な政策見解」として公開協議に提示した。ただし、同案が最終案となるか否かは、同案の有用性や合理性が安全面や金銭的な価値、その他の要求事項に見合っていると検証されることが条件。それらが満たされない場合は同案の廃棄・方向性の変更も十分あり得ると強調している。


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