【原子力ワンポイント】広く利用されている放射線(7) 放射線の透過力をX線検査などに利用

放射線には物質を通り抜ける性質(透過)があり、アルファ(α)線、ベータ(β)線、ガンマ(γ)線の順に透過力が強くなります。透過の性質は、非破壊検査やX線検査に使われています。

(7) ものを透視する放射線

ゆりちゃん 放射線にはどんな性質があるのですか?

タクさん 物質を通り抜ける性質があります。これを「透過」といいます。空港の手荷物検査や文化財などの非破壊検査など、日常の生活の中でも多くの機会に放射線が使われています。これらの検査は、透過という放射線の性質を利用したものです。

ゆりちゃん X線検査も放射線の透過の性質を利用したものですか?

タクさん 健康診断の胸部X線検査は私たちの生活でも身近ですが、このX線写真も、X線の物質を透過する性質とフィルムを感光する性質を利用しています。体を通ったX線は、体の組織で弱められたりすることで体内の様子をフィルムに焼き付けることが出来ます。X線写真上では、透過しやすいもの(肺)が黒く、透過しにくいもの(骨)が白く写ります。造影検査のように、黒いものの中に白く血管などを表現することも出来ます。このように放射線は、体や機械の内部の傷などの様子を切ったり分解したりせずに、写真にとったり厚さを測ったりすることができます。

ゆりちゃん 放射線の種類によって通り抜ける力(透過力)は変わりますか?

タクさん 放射線は物質にエネルギーを与えながら透過するので、失うエネルギーが大きいほど透過力は弱まります。透過力は放射線の種類や放射線が持っているエネルギーによりますが、エネルギーの高いものほど透過力は強くなります。

ゆりちゃん 具体的に放射線の種類による強さを教えてください。

タクさん 放射線の種類で比較すると、アルファ線はほかの放射線、例えばベータ線に比べると透過力は弱く、薄い紙1枚で止まります。ベータ線は紙では通り抜け、アルミニウムなどの薄い金属板で止まります。電磁波であるガンマ線・X線はアルミニウムなどの金属板では通り抜け、鉛や厚い鉄の板で止まります。電気を帯びていない中性子線は、他の放射線と異なり、アルミニウムや鉛のような金属は簡単に透過してしまう特殊な性質を持っています。しかし、質量の近い水素と衝突してエネルギーを失うので、水やポリエチレンのように水素を多く含む物質は透過しにくく、中性子線は水や水が含まれているコンクリートで止まります。

ゆりちゃん これからも放射線の透過という性質を利用した機械がたくさん開発されると良いですね。(原産協会・政策推進部


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで