海洋機構、東大、気象研 IPCC報告へ数値予測 地球平均気温の2℃上昇安定化に 2050年にCO排出ゼロが必要

海洋研究開発機構などの共同研究によると、地球温暖化防止の観点から、地球環境全体に甚大な影響を及ぼさないですむ範囲とされる、産業革命以前の平均気温から2℃上昇以下に抑制するためには、2050年以前に世界で化石燃料起源のCO排出量をほぼゼロにしなければならないとする、調査結果を取りまとめた。2013年9月から14年10月にかけて順次発表予定の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)第5次評価報告書に向けた気候変動予測の主要な数値実験をほぼ終了し、その計算結果の解析から新たな知見を導き出した。

東京大学大気海洋研究所、気象庁気象研究所との共同研究で、文部科学省の「21世紀気候変動予測革新プログラム」(2007年度〜11年度)に参画し、地球環境予測、近未来予測、極端現象予測など世界に先駆けた気候変動予測研究を行ってきたもの。

温暖化ガス排出量シナリオと簡易炭素循環モデルなどを用いてCO濃度シナリオを作成。その濃度シナリオを将来実現させようとしたとき、どのような排出量シナリオを実行しなければならないかを導き出した。

具体的には、CO濃度410ppm、メタン等を加え450ppm相当で安定化させることを実現するためには、2050年よりまえに化石燃料起源のCO排出量を全世界でほぼゼロにしなければならず、さらに70年ごろからはCOの人為的回収さえ必要になってくることを浮き彫りにしている。

同革新プログラムは、世界最高水準のスーパーコンピューター「地球シミュレータ」を使って、300年先までの長期的地球環境予測などを行った。

茅陽一・東大名誉教授は以前から、EUなどが提案している「2℃上昇安定化提案」がいかに困難かを指摘していた。

政府が昨年6月に閣議決定したエネルギー基本計画では、2030年までに原子力発電を中核とするCOのゼロ・エミッション電源の比率を約70%、原子力は全電源の約5割にするとの高い目標を掲げているが、政府全体として2030年以降の長期的な脱炭素社会を目指した対策の強化が求められる可能性が示されたといえる。


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