【原子力ワンポイント】 日本の放射線・放射能基準−−福島第一原発事故〈番外編(2)〉積算線量を考えた避難措置も

東日本巨大地震後に起こった福島第一原子力発電所の事故の影響が続いています。前回に引き続き、このシリーズの番外編として、避難についての疑問に答えます。

ゲン君 今回の事故で沢山の人たちが避難することになったね。

カワさん 地震が起きた3月11日の21時23分、原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)第15条第3項に基づいて、福島第一原子力発電所から半径3km以内の住民は避難、3kmから10kmの住民は屋内で退避するよう指示が出されました。翌日、内部の圧力を下げるために格納容器の弁を開けて放射性物質を放出し、避難範囲を半径10kmから20kmに拡大しました。原子力安全委員会の出している防災指針では、10ミリSv〜50ミリSvの放射線を浴びる可能性がある場合には屋内退避、50ミリSv以上の場合には避難を検討するとしています。3月15日には、新たに20km〜30km圏内の屋内待避を求めました。福島第二原子力発電所から半径10km圏内にも避難指示が出されています。

ゲン君 その後3月25日にお知らせがあった「自主避難」ってどういうことかな。

カワさん 政府は、半径20km〜30km圏内の住民に対し、「生活支援及び自主避難を積極的に促進するとともに、避難指示を想定した諸準備も加速化する必要がある」ことを伝えています。これは放射線防護とは関係なく、生活する上での物資の入手が難しい地域が出てきているので、それぞれの状況に応じて柔軟な対応をするということです。

ゲン君 4月11日には「計画的避難区域」が発表されていたよ。

カワさん 政府は東京電力福島第一原発から半径20km避難指示圏外で、気象条件や地理的条件によって放射性物質の年間積算量が20ミリSvを超える恐れのある地域を「計画的避難区域」にすると発表しました。これは国際放射線防護委員会(ICRP)、国際原子力機関(IAEA)の緊急時被ばく状況における放射線防護の基準値、年間20〜100ミリSvという基準値を考慮しています。対象地域に半年以上住み続けた場合の放射性物質による影響を考慮したもので、国や県、対象自治体が調整して、約1か月をめどに避難を開始する方針です。葛尾村、浪江町、飯館村、川俣町の一部、南相馬市の一部が対象となります。特に、子供、妊婦、要介護者、入院患者などは、この区域に入らないよう呼びかけています。この区域内の保育所や幼稚園、小中学校及び高校は休園、休校となっています。

また、福島第一原発から計画的避難区域を除く半径20km〜30km圏内を「緊急時避難準備区域」としました。この地域の住民へは、緊急時に屋内退避や避難ができるよう準備を求めています。広野町、楢葉町、川内村、田村市の一部、南相馬市の一部が対象となります。具体的には、今後、政府と地元自治体で調整し、数日のうちに決定される見込みです。

ゲン君 農場でも影響が出てきているね。

カワさん 福島県は、県内54か所の水田で土壌の放射性物質の詳しい調査を行いました。その結果、「計画的避難区域」などの対象となっている浪江町と飯舘村では、国の基準とした土壌1kg当たり5000ベクレルのおよそ6倍、2万9000ベクレルの放射性セシウムが検出されました。それ以外の自治体では基準を超える放射性セシウムは検出されず、県は46の市町村について、「稲の作付けに問題はない」とする見解を示しました。

(原産協会・情報コミュニケーション部)


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