イタリア 原子力の新設 条項を無効に

イタリアのS.ベルルスコーニ政権は19日、同国で原子力発電所を建設するための条項を無効とする法案を議会上院に提出した。

福島原発事故によって増幅された国民の懸念に配慮した形。一部の反対派が「6月に実施予定だった原子力復活法の撤回に関する国民投票を無効にするためのごまかしだ」として警戒する一方、産業界ではこの修正が原子力復活の無期限凍結につながり、少なくとも現政権下で原子力発電を復活させることは出来なくなると危惧している。

今回、経済開発省が公表した資料は「福島原発事故がすべてを変えてしまった」との一文で始まる。政府はエネルギー源多様化と供給保証のための新たな方策を特定し、再生可能エネルギーなどクリーン・エネルギーを生産する最良の技術を駆使していくと明言。今後20年間の新たなエネルギー戦略を秋頃までに策定するとしている。

しかしイタリア原子力フォーラムによれば、今回の修正により新設に関する手続きは撤回されても、原子力安全規制機関が担当する放射性廃棄物や使用済み燃料の貯蔵所開発に関する手続きは影響を受けないという。

また、上院がすでに承認済みの同修正案を下院が承認し、5月末までに確定すれば、6月12日に予定されていた国民投票はキャンセルされることになる。福島事故により悪化した国民感情を鑑みれば、今回の法修正は同投票によって原子力復活法が完全に撤回されるのを避けんがための手段という反対派の疑念もあながち否定はできない。

現政権は原子力復活に目処を付けることを公約に2008年に発足。09年には建設サイト選定や建設に関する手続きを定めた原子力復活法を制定した。しかし、野党の働きかけにより、今年6月に原子力復活法の撤回を求める国民投票の実施が決定。政府は福島事故発生直後は、原子炉の立地・建設に関する手続きの1年間のモラトリアムを決めていた。


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