IAEA会議へ政府報告書 過酷事故対策を強化へ

政府・原子力災害対策本部は7日、「東京電力福島原子力発電所の事故について」と題する報告書を発表した。20日からウィーンで開かれるIAEAの原子力安全閣僚会議に日本政府として報告するもの。本報告書は、事態が未だに収拾には至っていないことから、対策本部下に組織された政府・東京電力統合対策室が中心となって進めてきた事故収束に向けた取組を踏まえ、これまでに得られた事実関係をもとに、事故の評価や教訓を暫定的に取りまとめた。

報告書はまず、「高い透明性をもって情報を公開することを基本」とする方針を示した上で、事実関係を正確に記載すること、判明していることと未だ判明していないこととの区別を明確にしておくことなど、留意点を掲げ、5月31日までに判明したことに基づいて記述している。

事故の発生と進展に関しては、第一発電所で運転中だった1〜3号機が地震によって自動停止、同時にすべての外部電源が失われ、非常用ディーゼル発電機が起動したものの、津波の影響を受けて、これらも停止したことから、原子炉圧力容器へ注水できない事態が一定時間継続し、炉心の核燃料が水で覆われずに露出、炉心溶融(コア・メルト)に至り、その一部が原子炉圧力容器の下部に溜まったと推移を説明。また1〜3号機の炉心状態については、圧力容器の底部が損傷し、燃料の一部が格納容器のドライウェルフロアに落下して堆積している可能性も指摘した。

原子炉建屋やタービン建屋内部の汚染水、建屋外部の汚染水については、それぞれ作業性、環境への放射性物質の拡散を防ぐ観点から、管理が重要な課題となったとしている。

また今回事故を、国際原子力・放射線事象評価尺度(INES)に基づく暫定評価「レベル7」とした経緯も記述。

報告書では、事故発生から約3か月が経過し、多くの周辺住民避難、地域内の産業への影響などから、「過去のスリーマイルアイランド事故やチェルノブイリ事故とは様相の異なる点が多くある」とした上で、現在までに得られた事故の教訓を、「シビアアクシデント防止策の強化」、「シビアアクシデント対応策の強化」、「原子力災害への対応の強化」、「安全確保の基盤の強化」、「安全文化の徹底」の5グループに分類し、計28項目を掲げた。地震の影響については、詳細な状況がまだ不明なことから、さらなる調査が必要とする一方、津波については、シビアアクシデントを防止する観点から、再来周期を考慮した適切な発生頻度と高さを想定するよう要求している。

さらに、「今回の事故はシビアアクシデントに至ったもの」とし、92年の策定以来、見直しがなされていないアクシデントマネジメント対策を、事業者による自主保安ではなく、法規制上の要求とすることも含め対策強化を図ることを求めている。

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原子力安全・保安院は7日、シビアアクシデント対応の緊急措置として、(1)中央制御室の作業環境の確保(2)緊急時における発電所構内通信手段の確保(3)高線量対応防護服等の資機材の確保および放射線管理体制の整備(4)水素爆発防止対策(5)がれき撤去用の重機の整備――の実施状況を、14日までに報告するよう各電気事業者に指示した。


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