東京電力 滞留水処理が試運転開始 セシウム吸着で性能確認

東京電力は14日、福島第一原子力発電所における高濃度放射性滞留水の処理システムの一部装置について、試運転を開始した。冷却のための注水に伴いタービン建屋等に滞留した放射線レベルの高い水を処理し、原子炉注水に再利用する「循環注水冷却」を確立し、同社が事故収束に向けた道筋に示した「冷却」と「抑制」を達成するもの。14日に実施したセシウム吸着装置の試運転では、セシウム137の濃度が処理前の約0.003倍に低下するなど、性能が確認された。翌15日の除染装置の試験を経て、水処理ステムは、月内にも本格稼働の運び。

福島第一発電所では、高濃度の放射性物質を含む水が大量に滞留し、漏えいによる環境汚染、被ばくのリスクが生じており、5月末時点の建屋内滞留水の量は、1〜4号機と汚染水を移送する集中廃棄物処理建屋で、約10万立方メートルにも上っている。そのため、東京電力は5月上旬より、集中廃棄物処理建屋に移送・貯蔵された滞留水を処理し、原子炉への注入水に利用する設備の設置工事を、6月中の稼働を目指し進めてきた。

主要設備は、処理建屋に移送した水の油分を分離し、放射線レベルの低減と塩分除去を行う各装置から構成されている。油分分離装置で滞留水に含まれる油分およびスラッジを自然浮上分離により除去した後、放射性物質処理システムに移し、セシウム吸着装置(米国・キュリオン社)で3種類の吸着剤を充てんした吸着塔を通し汚染物質を除去、続く除染装置(フランス・アレバ社)で水槽中の汚染水をかくはんしながら薬剤を注入し、浄化された上澄みを抜き取ることで汚染物質を除去して、1日当たり1200トンの水処理を行う。放射性物質処理に続く淡水化装置は、8月〜10月に稼働する予定だ。

また、汚染水の処理が滞った場合を想定し、約1万立方メートルの貯蔵設備を8月以降設置する。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで