英国の廃棄物・深地層処分計画 処分開始時期を前倒し

英国のエネルギー気候変動省は6月28日、「放射性廃棄物の安全な管理計画」における初の年次報告書を公表した。手続きの合理化などにより、2040年に予定している深地層処分場(GDF)への廃棄物搬入を2029年末に加速する方策の検討を実施主体である原子力デコミッショニング機構(NDA)に指示している。

英国ではカンブリア州のコープランドとアラデールの2都市が、2008年と09年にGDFの受け入れに関心を表明したため、昨年は不適格地域判別のための初期スクリーニングを実施。コープランドにはすでに二つの原子力関連施設が立地しているほか、両市を擁する州政府も同様の関心表明していることから、今後のサイト選定手続きもスムーズに運ぶ可能性が高いと思われる。

英国政府は2006年にHLWを中間貯蔵後に地層処分する管理方針を決定し、08年6月に6段階の地層処分場サイト選定手続きを示した「白書」を公表。昨年7月には、低中レベル廃棄物を含めたすべての廃棄物を時期をずらして1つのGDFに埋設し、2130年以降、最終的にすべての坑道と立ち入り口を埋め戻すことを仮定した概念例を提示していた。

今回の年次報告書は、2010年4月から今年3月までに進めた手続きの詳細を議会に提示するため、政府がまとめたもの。安全で確実な中間貯蔵と深地層処分、および受け入れ地域の自発的意志に基づくサイト選定手続きの実施を再確認するとともに、閣僚が議長を務める地層処分実施審議会(GDIB)を設置した。GDIBは処分計画の実施を上級レベルで監督するほか、事業者や地元自治体、規制当局、非政府組織らによる意見表明や、同計画の監視を可能にする。

白書が明示した「2040年以降」という現在の処分開始時期は、候補地の机上調査に要する期間を4年間、地震検査や試掘孔掘削など地上からの調査に10年間、および廃棄物受け入れ前の研究や初期建設など地下施設での活動に15年間として試算。先行するスウェーデンや仏国、フィンランドなどの国際経験を元に、英国では32年かかると見積もっている。

なお、政府は同日、候補地を特定する机上調査の方法と候補地の評価方法について公開諮問文書を公表。ほかの地方自治体からも受け入れ関心表明を待ちたいとしている。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで