佐賀県 玄海安全性でフォーラム 再開巡り、住民多数

佐賀県は8日、玄海原子力発電所の緊急安全対策についての県民フォーラムを同県多久市中央公民館で開催した(=写真)。参加者は市町ごとに定員数が決められており、抽選倍率は佐賀市で約20倍、全市町平均では約3倍。25人の県議を含めて約350人が会場に集まった。

フォーラムに先立って経済産業省は6月26日、7人の住民をスタジオに招集して説明会を開き、地元テレビ局で放映したが、それに対して「時間が足りない」「説明が難しい」などの声があったのを受け、今回は県が第2弾として主催した。一方、今回のフォーラムの開催決定後、国が急遽ストレステスト(耐性評価)を行うことを決定したために、一度は玄海原子力発電所の再開を容認していた玄海町長が撤回したほか、説明会での意見募集に関して九州電力社員によるやらせメール問題が明らかになるなど、状況が目まぐるしく変わる中での運びとなった。

今回のフォーラムでは、まず古川康・佐賀県知事が「わからなかったこと、不思議に思っていることが1つ1つ、何が課題かも含めてわかっていくといいと思う」と挨拶。前回の説明会に引き続きコーディネーターは、寺崎宗俊・佐賀新聞客員論説委員。山本哲也・原子力安全・保安院原子力発電検査課長、長山由孝・同院原子力発電検査課原子力安全専門職、森本英雄・資源エネルギー庁原子力立地・核燃料サイクル産業課長が説明側として出席。玄海原子力発電所の耐震性や緊急安全対策の内容を5分で説明し、安全面で運転再開に問題のないことを再度強調した。

また、前回説明会に参加した住民のうち4人が出席し、「国のトップがまとまらないことで地元住民はふりまわされている今、何かを発言しても結局は同じなのではないか」という諦観や、「電力は足りているのに、原子力なしでも夏を乗り切れるという前例を作らないための運転再開なのでは」という疑念を語った。

経済産業省は、なぜストレステストを欧州で行われていた段階で適切に伝えてこなかったのかとの問いに対し、指摘はその通りだと回答。また、プルサーマル玄海原子力発電所に対応した安全対策をとっているかとの質問には、きちんとMOX燃料の熱量に合わせた冷却を行っていることを説明した。また、佐賀県の被ばく医療体制についても、適切な防災計画が提出されているとし、今回の事故を受けて再検討することになった場合は速やかに反映していくと語った。

その後会場からの質問を受け付けると、国に対する激しい糾弾やコメントへの野次などで場内は騒然。発言や質問を希望する参加者は事前に場内に設置された箱に提出し、箱の中から9名分の用紙が引き当てられて質疑を行った。

「化石燃料がなくなっていく中、原子力発電は必要。玄海原子力発電所は丈夫な建物だし、固い岩盤の上に立っている上防護壁があって15メートル以上の高台に立っており、これ以上安全なところはない」、「朝鮮半島が有事となればテロ攻撃などが心配だが、今やらせメールの件でおたおたしている九州電力は、危機の状況で対応できない企業だと証明されたのでは」など、再開に賛成の立場からも反対の立場からも発言があった。会場からは厳しい意見が相次ぎ、予定時間を30分ほど過ぎて閉会した。

フォーラム終了後、前回の説明会にも出演した参加者は、「この1週間で激動があったのに国の説明の仕方は変わっていない」などとしながらも、「こうした説明会は何度も行うべき」と次回の開催に期待を寄せた。しかし前回の出演後、車に上られてガラスをたたかれたり、電話やメールなどで嫌がらせをされたりするなど、一市民としての生活を脅かされる場面があったことにも触れ、反対派も推進派も議論の場で冷静に話し合っていくことを求めた。

古川知事は、「前回よりは突っ込んだことができたという意味において、実りがあった」とし、今後の対応については、現時点ではこのような方式の説明会はこれで1つの区切りとの考えを示し、国のストレステストのあり方についての議論の様子を注視しながらどういう対応をしていくのか考えていくと語った。


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