英国のエネルギー相 原子力の新設推進を明言 「1基でなく複数の原発が必要」「原子力は今や、我々のエネルギー供給保証に不可欠であり、2050年までに地球温暖化防止目標を満たし供給保証の一助とするためには、ただ1基でなく複数の原子力発電所が必要だ」 福島事故後、脱原子力への道を選んだドイツやイタリア、スイスについて同相は、「彼らは原子力技術を放棄し、実用主義よりも政党政治を選んだ」と断言。英国で同様の政策を取れば、2050年までに新たに650億ポンドのコストがかかるとして、その危うさを指摘する一方、英国は確固たる政策の下、原子力なしでは達成が覚束ない明るく豊かな国家に向け、低炭素電源の一部として原子力の新設計画を推進する決意を示している。 福島事故とその教訓同相はまず、福島事故により原子力の安全性に世界の注目が集まった点に言及。続けて、中東危機やメキシコ湾での原油流出事故など、石油・ガス探査におけるセキュリティ問題に触れ、「どんなエネルギー源にも潜在的なリスクはある」と指摘した。だからこそ、再生可能エネルギー、クリーン石炭、ガス、原子力などを混合したエネルギー政策が必要なのだとしており、2050年以降も、安全で低炭素かつ潤沢なエネルギーを得るには、今後10年間で古い原子炉や石炭火力発電所のリプレースに1100億ポンドの投資が必要になると明言。英国では過去16年間に1基の原子炉新設もなかったことを説明した。 福島事故が残した教訓については、「既存炉および新規原子炉をいかに継続的に改善していくかで政府と産業界の両方に学ぶべきものがある」とし、安全性こそが最優先であることを確認。一方、英国では原子力発電所がこれまでに堅固な安全実績を残してきたと強調するとともに、独立の規制機関のM.ウェイトマン長官が暫定報告書の中で「英国の安全体制は良く機能している」と評価した点を明らかにした。 英国の原子力新設計画こうした背景の下、英国政府が実施している投資条件の整備活動として、同相は原子力新設計画の進捗状況を紹介。事業者が申請する建設計画について、採否の審査枠組となるエネルギー国家政策声明書(NPS)が、6月に議会に提出されたと説明した。また、採用設計の事前評価作業ではアレバ社とウェスチングハウス社の両方が、暫定設計承認書(IDAC)取得に向けて課題をクリアしつつあるとしている。 原子力産業界との関わりについては、英国全土で供給チェーンが構築されつつあるほか、潜在的な新設サイト8か所毎に5000人分の雇用が提示されるなど、幅広い経済利益がもたらされると強調。1950年代以来、最大の原子力ルネッサンスが到来しつつあると明言した。現在、事業者が計画している原子力設備は1600万kWで、投資額にして500億ポンド。予備作業前のヒンクリーポイントでは、仏電力がすでに1150万ポンドを地元に投資している。 結論として同相は、政府が責任を持って新設を進めている点に疑いはないと改めて強調。エネ相としての自身の目標は、英国を最も魅力的なエネルギー投資の場とすることだとし、原子力を将来のエネルギーの一部とするため、関係者達と働いて行きたいと訴えた。 |
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