全原協総会 河瀬全原協会長挨拶

【東日本大震災】

さて、3月11日に発生いたしました東日本大震災では、全原協会員も大きな被害を受けました。とりわけ宮城県、福島県、茨城県の会員の方々におかれましては、地震・津波による甚大な災害に見舞われました。

今も復旧・復興に向けて住民の先頭に立ち、全力で御尽力されている皆様方の御労苦は、到底推し量ることができないものと感じております。

全原協といたしましても、同じ原子力立地地域の仲間として、食料等の緊急支援物資や僅かばかりの支援金を送らせていただきましたが、今後とも出来る限りの復旧・復興の御支援をさせていただきたいと考えておりますので、皆様方の御協力をお願い申し上げます。

【原子力災害】

また、今回の大震災における地震と津波により、東京電力・福島第一原子力発電所では重大な事故が発生し、我が国がこれまで経験したことのない深刻な原子力災害を引き起こしました。

これまで、立地地域では、住民の安心安全を大前提に、原子力との共存共栄を目指してまいりましたが、その前提を損ねる不測の大災害の発生に、全原協会長として、非常に大きな衝撃を受けております。

震災の発生から約5か月が過ぎようとしておりますが、未だこの原子力災害は収束しておらず、被災地の復旧・復興や全国民の安心安全確保に大きな障害となっております。

全原協といたしましては、これまで国に対して、一刻も早い事態の収束を要請して参りましたが、被災者の皆様方が1日も早く生まれ育った町へ戻れますように、引き続き、出来る限りの取り組みをさせていただく所存でございます。

【安心安全の確保】

この原子力災害の発生によって、全国の原子力発電所の安全確保、防災体制の見直しも重要な課題となっております。

国においては、緊急安全対策やシビアアクシデント対策など、福島原子力発電所事故で得られた知見に基づく安全対策を指示しておりますが、未だ原因の徹底的な究明は進んでおりません。今後とも、得られる知見を適切に反映し、更なる安全性向上対策に取り組んでいく必要があります。

また、今回の災害時における国の情報発信のあり方については、政府、保安院、東京電力、三者三様に行われ、結果として、国民全体に原子力に対する不信を与えるものとなりました。

各自治体への避難指示についても、何処に避難するのか、どうやって避難するのかなどの具体的な指示はなく、大震災により混乱する立地地域に大きな負担を強いることとなりました。

さらには、オフサイトセンターの防災拠点機能の喪失をはじめ、SPEEDIシステムの予測機能が活用されなかったことや国の防災指針であるEPZ(緊急時計画区域)10km圏内を超える範囲での避難など、従来の防災体制が全く機能しない異常事態となりました。

国・事業者においては、安全確保に全力を尽くし、我が国で二度とこのような凄惨な事故を発生させることのないよう、原子力発電所の安全基準や安全規制体制の見直しを行うとともに、防災指針の抜本的な見直しを行い、平常時・緊急時を問わず、如何なる事態においても住民の安心安全を確実に確保するよう、強く要請して参る所存であります。

また、原子力災害の影響による農水産物への風評被害も深刻な事態を招いており、食の安全について、科学的根拠に基づき、分かりやすく丁寧に説明し、国民の信頼を得ることが急務であります。更には、被災者の方々が、根拠のない思い込みや偏見から差別を受けるような風評被害なども発生しております。

国においては、これらの被害防止策を迅速かつ確実に講じ、原子力に対する国民の信頼回復に向けて、的確な情報提供が行われるよう強く求めてまいります。

【エネルギー政策】

原子力を取り巻く環境は、震災以降大きく変化し、原子力を巡る政府対応の混乱も相まって、国民の原子力に対する不安や不信は日に日に増しております。

地元への事前の説明も無く行われた浜岡原子力発電所の全面停止要請を皮切りに、玄海原子力発電所の再起動要請と突然のストレステストの導入、国民的議論を経ずして行われた菅総理のエネルギー政策に関する方針表明によって、これまで堅固に築き上げてきた立地地域と国との信頼関係は、大きく損なわれております。

エネルギー政策は、国民生活、産業構造など、我が国の根幹に関わる最重要政策であります。しかしながら、具体的な将来展望を描くことなく行われている場当たり的な政府の一連の対応によって、社会や経済に大きな不安と混乱を招き、立地自治体、地域住民のみならず、全国民の原子力に対する不信感を増幅させております。

この度の政府の軽々しい姿勢は許し難く、強い憤りを禁じえません。

本来、今後のエネルギー政策のあり方については、原子力がこれまで果たしてきたエネルギー安全保障上の役割や電力安定供給への貢献、代替エネルギー導入に係る国民負担とその時間軸を国民に詳細に説明した上で、十分な時間をかけて議論すべき最重要課題であります。国は、立地地域の思いを踏まえた明確な方針を示し、国民に対して、しっかりと説明責任を果たすことが肝要であります。

我が国の持続的な発展が妨げられ、将来にわたり国民が如何なる不利益も被ること無く、今後のエネルギー政策を着実に進めるよう、国に対して強く要請していく所存であります。

【終わりに】

現在、原子力に対して、これまでにない強い逆風が吹いており、今日まで原子力とともに歩んできた立地地域も非常に厳しい自治体運営を余儀なくされております。

私自身、再生可能エネルギーの研究開発やその活用も有効と思っておりますが、我が国のエネルギー事情を鑑みると、未だ原子力の果たすべき役割は失われていないと考えております。一方で、これからの原子力政策の方向性については、各会員の方々には様々な御見解があることも承知しております。

このような原子力情勢の中で、これまで以上に全原協会員一丸となり、原子力を取り巻く諸課題の解決に取り組んで参る所存でございます。


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