原子力技術で共同研究 加・サスカチュワン州と日立

カナダのサスカチュワン州政府は8月25日、放射線利用による検査・医療技術、材料科学の共同研究開発・検証で日立製作所と覚書(MOU)を締結したほか、原子力発電の安全性向上、および小型原子炉技術に関する共同研究開発で、日立GEニュークリア・エナジー(日立GE)社、GE日立ニュークリア・エナジー・アメリカ(GEH)社、およびグローバル・ニュークリア・フュエル・アメリカ(GNF−A)社と、もう1件の覚書を締結したと発表した。

同州が今後、これらの分野でリーダー的立場を確保していくため、日立製作所らが海外市場拡大の一環として協力していくことになったもの。これら2件の覚書を実行・支援する経費として、両者は今後5年間に1000万カナダ・ドル(約7億8000万円)を折半で投入するとしている。

実際の研究開発活動の場となるのは同州内にある2つの大学のほか、サスカチュワン研究委員会およびカナダの国立シンクロトロン研究施設などで、資金は各分野ごとの研究機関設立や研究支援、がんや心臓疾患の診断・治療のための陽子線がん治療システムとPET設備の開発に投資。陽子線治療の技術開発と商業化における日立製作所のこれまでの実績、核医学および画像診断技術の開発のために同州に設置されたカナダで唯一のシンクロトロンなどが活用される。

原子力分野では、実際に使用されなかった燃料棒からウランを取り出して再利用する研究で日立GE社、GEH社およびGNF−A社が同州政府と協力。また、現時点で同州が原子力発電を推進するか否かの判断は下されていないものの、小型炉(SMR)の設計および実行可能性研究についても、これら3社が協力していく。

具体的な原子炉設計名は公表されていないが、日立製作所はこれまでに日本原子力発電会社の委託研究により、40万kWクラスの自然循環型BWRである「DMS(Double Modular Simplified and Medium Small Reactor)」の開発を推進。消費地への近接立地や長期サイクル運転が可能なほか、サイトでの燃料交換不要等の特長があることから、同設計をベースに研究開発を進めていくと見られている。

小型炉は工期が短く建設価格も手頃で、小規模の電気事業者にも手が届くとの観点から、ウェスチングハウス(WH)社がAP1000技術を進展させた出力20万kWの一体型PWRを開発。また、バブコック&ウィルコックス(B&W)社は出力12.5万kWの「mPower」を開発するなど、今後、世界的なSMR市場拡大が見込まれている。


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