野田新内閣発足、経産相に鉢呂氏 民主党政権3代目 文科相には中川元副大臣 細野原発事故相は留任 環境相兼任で除染作業加速へ

菅直人首相の退陣に伴い、野田佳彦・前財務相が新首相に指名され、9月2日、民主党政権で3代目となる野田内閣が正式発足した。3月の東日本大震災からの復旧・復興、福島原子力発電所事故の収束といった重要課題に対して、エネルギー基本計画は白紙から見直すという前政権からの方針は踏襲するものの、「中庸」の政治をめざし、「電力は日本社会の『血液』」とする野田首相の新たな政権運営の方向性が注目される。

宮中での親任式を終えて官邸で記者会見に臨んだ野田首相(=写真)は、前政権に引き続き大震災からの復旧・復興を「最大の使命」に掲げるとともに、原発事故の1日も早い収束を「何よりも最優先で取り組まなければならない課題」として、原子炉安定の確実な実現、周辺地域の放射性物質の除染に省庁の壁を越えて取り組む姿勢を示した。

また、世界経済における危機に際し産業空洞化の回避、エネルギー制約の中での経済の立て直しに向け、国内的な円高対策、中小企業対策など、着実に対応策を講じていく考えを述べた。

特にエネルギーの制約の克服について、「電力は経済の血液、国民生活の基盤」などとして、短期的な需給不安の払拭とともに、中長期的な電力・エネルギー計画の見直しに取り組んでいくこととしている。

また、党内代表選挙演説でも断行するとしていた行政刷新については、徹底的な無駄削減のため推進していく決意を改めて強調、財務相の経験も活かして、財政健全化に強力に取り組む考えを述べた。

今後のエネルギー政策について、記者からの質問に対し野田首相は、原子力発電所の新設は「もう現実的には困難」と述べたほか、寿命に達したものは廃炉にするとして、将来的には原子力への依存を減らしていくことを、「1つの基本的な流れ」として示唆した。また、再稼働に向けては、ストレステストを含めた安全性の厳格なチェックを踏まえ、地元の理解を獲得する環境整備が必要とした。

経済産業相には、鉢呂吉雄衆議院議員(当選7回、北海道4区=写真右)が就任した。官邸内の記者会見で同氏は、「国民の安全・安心」を第一に据え、原発事故収束に向けて、特に、除染は、「全県的に国が関与して早急に」実施するとした。またエネルギー政策については、新成長戦略実現会議とも連携のもと、近々、総合資源エネルギー調査会での検討を開始し、「国民的な合意」を得ていくとしている。

文部科学相には、中川正春衆議院議員(当選5回、三重2区)が就任した。同氏は原発事故対応に関連して、子供たちの安全・安心を守るべく、校庭の除染を完了させるとともに、環境モニタリングの充実にも具体的目標を持って取り組む姿勢を示した。高速増殖原型炉「もんじゅ」の予算については、「私はつけるべきだと思っている」と述べた。

細野豪志・原発事故担当相は留任し、環境相も兼務することとなった。

同氏は、事故の一刻も早い収束、「原子力損害賠償支援機構」を通じた速やかな被災者への賠償実施、放射線汚染対策の3点を取組課題に掲げるとともに、原子力安全規制の組織改革については、新組織の設置だけでなく、規制のレベル向上も視野に入れ、来年4月の新体制施行を目指し、「スピードと質」を上げていくとした。

また環境相としては、地球温暖化対策に関し鳩山元首相の提唱した「20年までに25%削減」を踏襲し、国民的議論で達成の方向性を見出していく考えを強調、11月からの南アCOP17にも出席の意向を示した。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで