スイス上院・エネルギー委が修正勧告 次世代原発の建設に道

スイス議会上院のエネルギー環境委員会は8日、下院が6月に採択した脱原子力に向けた3つの動議について、文言を「『既存の世代の原子力発電所』については建設を禁止する」と上院に修正勧告し、安全性が改善された次世代原子炉の新設に道を残した。連邦エネルギー局の高官は「福島事故は確かに原子力に対する国民世論に影響を与えたが、賛否に関する基礎的な見解がひっくり返ったわけではない」と指摘しており、今回の判断はそうした世論動向を反映していると分析。これらの動議は28日の上院本会議で票決され、改めて下院の審議に戻されることになる。

スイスの連邦参事会(内閣)は今年5月、福島事故後に国民の間で急速に高まった反原子力の気運に押され、「2034年までに国内の原子炉5基すべてを段階的に閉鎖していく」との方針を固めた。議会下院はこれを受けて、6月の審議で(1)「連邦参事会は今年の夏までに段階的な脱原子力のシナリオを策定する」(2)「原子力法改正により、2012年1月以降、原子炉の新設に許可を与えない」(3)「安全基準を満たさない原子炉は直ちに閉鎖する」――との動議を採択、上院での審議に回していた。

8月30日の上院・環境エネルギー委員会では、スイスのエネルギー供給保証全体を視野に入れた議論が展開され、(1)内閣が高いレベルの供給を保証するよう役割を担わせる(2)原子力の廃止に際し、政府に様々なエネルギー源に関する技術的および経済的な側面を総合評価させる――などの介入動議が支持を得た。原子力も含めてすべてのエネルギー技術に関する研究が継続されるべきだとの論調が大勢を占め、再生可能エネルギーの利用やエネルギーの効率化および電力供給網の問題と併せて上院審議の俎上に上げることになった。

同委が上院への勧告として承認したのは以下の点。すなわち、(1)現在の世代の原子力発電所建設には新たな認可を発給しない(2)安全基準を満たさない原子炉は直ちに閉鎖(3)総合的なエネルギー戦略は原子力に頼らない電力供給を保証するとともに、海外からエネルギーを輸入せずにスイス経済の健全性を維持できる内容とする(4)すべてのエネルギー技術について海外協力等を通じた研究開発を継続する――などである。


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