原子力eye 57年の歴史に幕 休刊前に脱原発危惧

日刊工業出版プロダクション発行の月刊原子力専門誌「原子力eye」(中村悦二編集長)が11月号(10月8日発売)をもって、休刊となる。

1955年(昭和30年)3月に「原子力工業」として創刊以来、98年の「原子力eye」への改名を経て、約57年の歴史に一旦区切りを付ける。「諸般の事情により今回休刊することを決定した」としている。

福島第一原子力発電所の事故の検証が、政府の専門委員会や原子力学会などで進められており、世界に与えた影響も、ほとんど関係なく推進路線を邁進する中国、インドなどがある一方で、ドイツ、スイス、イタリアは脱原発路線に舵を切った。米国での原子力発電所建設の雲行きも気になりつつ、一体、日本の原子力開発はどこに向かおうとしているのか、というこの先を見極める重要な時期の休刊となった。内閣府のエネルギー・環境会議(国家戦略会議)、経産省の総合エネルギー調査会、原子力委員会の新大綱策定会議と同時並行的に議論が進められることになっており、民主党政権+福島原子力事故の下では、いままでの先の見通しの「常識・価値観」は通用せず、温暖化ガス25%削減目標と合わせて、野田首相が言う「幅広く国民各層の意見を聞きながら、冷静に検討して行く」との方針のみでは、国民だけでなく実際に原子力を担っている、またはこれから担いたいと考えている若者達に、計り知れない影響が出てくることは、想像にかたくない。

原子力eyeの10月号では、遠藤哲也氏(ウィーン国際機関日本政府代表部大使、原子力委員長代理などを歴任)が福島事故を受けて、「脱原発の下でのサイクルの行方」を論じており、脱原発は「国民生活、経済活動に取り返しのつかない打撃を与えることになりかねない」と警鐘を鳴らすだけでなく、「核燃料サイクルは原発システムの一環であり、核燃料サイクルの帰すうは、期間のずれはあるにせよ、原発が今後どうなるかにかかわっている」と、日米原子力協定の改訂問題にもからめて、今後100年の計とも言える燃料サイクルの行方についてたいへん大きな危惧の念を示している。


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