福島後の安全向上で協力 中国と台湾の民間団体

中国の海峡両岸関係協会(ARATS)と台湾の海峡交流基金会(SEF)は20日、原子力発電所における安全性向上を目的に、台湾海峡を挟んだ中国と台湾の「両岸」が協力していくための協定に調印した。福島第一原発事故の教訓から緊急時の情報交換を迅速化するとともに、双方の原子力発電施設におけるセキュリティ強化でメカニズム構築を目指す考えだ。

台湾は中国による国際原子力機関(IAEA)と核不拡散(NPT)条約への加盟を機に、これらからの脱退を余儀なくされたが、その後も米国および日本とは協力関係を維持しているほか、中国とも民間のパイプを通じて原子力発電所に関する情報交換等で協力してきた。今回の協定締結は過去3年間に7回開催したATATSとSEFの会合の結果、合意に至ったもので、ARATSの陳雲林会長とSEFの江丙坤会長が調印した。

原子力災害に国境はないという事実もさることながら、今年3月に台湾から2000キロメートル離れた福島で発生した事故は特に、南東部の海岸沿いに多くの原子力発電所が立地する台湾と中国の双方にとって、地震と津波による潜在的な脅威、事故時の通報・協力メカニズムとセキュリティ強化の必要性を改めて痛感させたという。

こうした背景から両者は、相互依存と互恵の原則の下、緊急時に迅速に事故状況を把握し、適切な対応を取れるよう、リアルタイムの事故通報および安全情報の開示・交換を強化し、原子力施設の安全管理を保証する調整メカニズムの構築で協力の枠組協定を締結した。

現段階では同協定の対象は原子力安全に限られており、原子力発電産業の発展や技術移転、および放射性廃棄物と使用済み燃料の処理処分に関する協議は含めないとの原則が貫かれている。

同協定により、両者は今後、平常時には会議やシンポジウム、職員の相互訪問といった形で情報交換を実施。原子力発電所の安全性モニタリングや管理、対応能力などについても相互に改善を促進していくとしている。


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