原子力ワンポイント 日本の放射線・放射能基準 ――福島第一原発事故〈番外編M〉 一定レベルの放射線は生命維持のため必要人は放射線のある環境に順応しているので、多少線量が高い地域に住んでいてもガンが増えることはないようです。一方、放射線が無くなると細胞の増殖低下が認められる実験結果さえあります。 ゲンくん 暑い夏が終わってホッとしている人も多いね。 カワさん 夏は紫外線が強くなるので、特に対策が大変だね。でも紫外線はビタミンDを作るので人類にとっては必要なものです。一方、紫外線は活性酸素も作るので、人はガンにならないように紫外線をカットするメラニン色素を増やすので、特に赤道付近の人は肌が黒くなるのです。 ゲンくん 紫外線も多すぎても少なすぎてもいけないんだね。 カワさん 紫外線より波長の短い電波である放射線も、同様に多すぎても少なすぎてもいけませんが、少しぐらい多いことには順応性があります。中国広東省陽江県には自然放射線レベルが2〜5mSv(ミリシーベルト)/年の地域があり、約7万人が住んでいます。1979〜1998年にかけて調査が行われましたが、隣の恩平県(普通の放射線レベル)と比べてもガンによる死亡率に有意な差は見られなかったそうで、多少線量が高いといわれる地域に住んでいても、ガンが増えることはなさそうです。一方、放射線がなくなった場合について、フランスのプラネル氏らがゾウリムシを培養する実験をしているので紹介します。飼育8日目までの結果の概要をグラフに示します。遮蔽なしが自然界にある強さの放射線(1.75mGy(ミリグレイ)/年)を受けている状態ですが、遮蔽がある場合のほぼ2倍のゾウリムシの数になっていることがわかります。 ゲンくん プラネル氏以外にも放射線が無い状態の実験をした例はないの。 カワさん プラネル氏の実験の続報が出ないので、大阪府立大学が追試しました。「遺伝子環境科学研究室」では、厚い鉄板で覆って自然の放射線の少ない状態(ガンマ線量―50分の1、中性子線量―4分の1)を作り出し、その中でゾウリムシを2か月間培養すると、増殖が低下することを報告しています。またマウスの細胞を同じ環境で培養する実験も行い、この場合にも細胞の増殖率が低下することを確認しています。しかし、自然界にある放射線(ガンマ線)の強さに戻すと、ゾウリムシもマウスの培養細胞も増殖低下は見られなくなりました。 このことから、「生物は常に極低レベルの放射線が存在する環境で生きており、その放射線は生命維持に何らかの重要な役割を果たしているのかも知れない」と結論付けています。生命は放射線のある環境に順応しているのだと思います。 自然界にある強さの極めて弱い(低いレベルの)放射線がもたらす不思議な現象にも踏み込んだ研究がたくさん行われて、放射線の働きがより広くわかることが望まれます。(原産協会・政策推進部) |
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