「大胆な政策転換必要」 IEAが「世界エネ予測」で勧告

国際エネルギー機関(IEA)は9日、2011年版の「世界エネルギー予測」を発行した。

世界のエネルギー需要や供給予測に関する最新データと関連政策についてIEAが毎年まとめているもので、世界のエネルギー市場の現状を分析するとともに25年後を見通す内容。2010年実績を盛り込んだ最新版では、「大胆な政策転換をしなければ、世界のエネルギー供給は今後、不安定で非効率的、かつ高炭素なエネルギー技術に固定化するなどの持続不能な状態に陥る」と指摘。その影響は広範囲にわたるだろうと警告しており、軌道修正の時間はまだあるものの、そのチャンスは次第に狭まりつつあると訴えている。

2035年までのエネルギー需給見通し

IEAが予測の基盤とした「新政策シナリオ」は各国政府が近年のエネルギー政策を実行に移すことを前提としており、これにより、世界の1次エネルギー需要は2010年〜35年の間に3分の1増加する。その9割が非OECD諸国によるもので、中国が世界最大のエネルギー多消費国であるという位置付けは確定的。ただし、同国は35年までに米国の消費量より約7割多量のエネルギーを消費するにも拘わらず、1人当たりの需要量ではなお、米国の半分以下に留まるとしている。

世界の1次エネルギー消費量における電源別シェアについては、化石燃料が現在の81%から35年には75%に低下。一方、水力を含めた再生可能エネルギーは、補助金が現在の4倍近い2500億ドルまで増額されていくという背景から、13%だったシェアは18%に増えると予測した。

「新政策シナリオ」ではまた、世界の今後25年間のCO累積排出量は、過去110年間の総排出量の4分の3に相当し、長期間にわたって平均3.5度気温が上昇すると計算。2035年に中国の1人当たりの排出量はOECD諸国の平均と同等になるため、何らかの新政策が実行に移されなければ、6度の気温上昇という一層危険な状況に陥ると警告している。

こうした背景からIEAは、各国政府が効率的かつ低炭素な発電技術への投資促進で強力な方策を導入する必要があると言明。日本の福島原発事故、産油地域である中東とアフリカ北部での紛争、そして2010年にCO排出量の記録的な増加を引き起こしたエネルギー需要の急激な回復は、事の重大さと緊急性を際立たせることになるだろうと明言した。

原子力発電開発

原子力に関しては、福島事故がその将来の役割について問題を提起したとIEAは指摘。新政策シナリオによると、世界の原子力発電量は35年までに現在の7割以上増加すると予測しており、これは昨年版の予測値をわずかに下回った程度だ。これは、同事故後も多くの国が開発の継続を再確認したことによるものだと説明しているが、不確定要素が増した分、これが今後変化することもあり得るとしている。

原子力開発がとりわけ低規模に留まった場合のシナリオとしては、将来のエネルギー供給の中で、原子力が期待量の半分以下しか貢献できなかったと仮定。再生可能エネルギーが大幅に躍進する一方、輸入量が増加し、供給への不安が拡大するほか、地球温暖化への対応も一層困難かつ高額になるとの見通しを示している。


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