遠藤富岡町長に聞く 除染なくして帰還なし

福島県富岡町の「災害復興ビジョン策定委員会」は11日、役場が置かれている郡山市の「ビッグパレットふくしま」で第5回会合を開き、震災後の町の復興計画作りで指針となるビジョンの原案を議論した。この日の会合に出席した遠藤勝也町長に、町の復興や再建をめぐって話を聞いた。

   ◇  ◇   

富岡町の復興を目指して町民とともに8月から議論を進めてきた「災害復興ビジョン」の策定も大詰めの段階に来ている。福島県のビジョンとの整合性を図りつつ、優れたビジョンが作り上げられることを願っている。

復興のためにまず重要なのは町の除染だ。除染なくして町民の帰還もない。除染なくしては復興計画も紙上での作業に過ぎなくなってしまう。

11日には政府において除染の基本方針が閣議決定されたが、相変わらずスピード感がない。ロードマップと具体的なマニュアルを早急に示して欲しいと思う。

今、復興・生活再建をめぐって、町民の意見・要望は以下の4つに集約できるのではないか。(1)いつ町に帰れるのかを知りたい(2)線量の高い地域と低い地域があるが、どの程度の除染作業で環境が改善されるのか(3)町に帰っても仕事があるのか(4)現在の避難生活の間の生活資金の補償はどうなるのか――。先般、細野原発担当大臣と会談した際にも、国にこれらへの回答を早く示してほしいと強く申し上げた。

復旧・復興対策において国の動きは遅い。除染と並行して早急に国に進めてもらいたいのはライフラインの復旧だ。警戒区域であっても、早期に調査を実施して、既存ライフラインを復旧するのか、あるいは新たなシステム作りを行うのか、比較検討があってもよいのに、今もって形が見えてこない。ライフライン復旧対策のため新しいチームが設置されたようだが、これが早く機能することを望む。

いずれにしても、「いつ町に戻れるのか」を知りたいというのが住民の強い気持ちだろう。見通しが立たず長引くと、町民の故郷に対する思いが失われることを心配する。目安として3年が限度ではないか。

帰還後の町民の雇用確保も大きな課題となる。町の復興には雇用創出が不可欠だ。先月、福島県議会で県内全原子炉の廃炉決議が採択されたわけだが、その方向性に沿うのであれば、この地域に廃炉関連の産業の集積を実現させることを考えなければならない。国際的なレベルでの廃炉事業の拠点となることが重要だ。そのためには、事業をしっかり遂行できる人材が求められる。有能な人材の集約のためには、産業界の協力が必要だ。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで