原子力等の成長を確信 アレバ社の財政立て直し計画

仏アレバ社は、2014年には自己資金調達が可能となることを目標に、原子力と再生可能エネルギーの分野で今後見込まれる成長を活用することや、投資プログラムを厳選するなどの方針を盛り込んだ2016年までの戦略的行動計画を12月13日に公表した。2011年度決算では営業損失が予想される同社だが、原子力のみならず、再生可能エネルギー市場においても中心的役割を担うことをゆるぎないものとするのが狙いだ。

同社の上半期決算では全受注残高のうち、17.5%が日本とドイツからの注文。しかし、福島事故にともないフロント・エンド業務分の2億ユーロが両国からキャンセルされ、受注残高は10年度末実績との比較で10億ユーロ以上減の430億ユーロにとどまった。11年度末決算でも、燃料サイクル関連の注文が欧州等で短期的に延期となったほか、07年にアフリカのウラン生産企業を買収したことが、福島後のウラン価格下落により14億6000万ユーロの損失につながる見通しだ。

ただし、同グループの利益の8割以上は既存炉で繰り返し発生する事業によるもの。受注残高は5年先までの販売額を現しており、事業の可視性は高いと強調。その上で、財政構造強化策としては、今年から2016年までの投資プログラムを34%削減して77億ユーロとする。が、安全性関連の投資は現行と同じ20億ユーロレベルを維持する方針である。

2015年までに事業費を10億ユーロ、必要運転資金を5億ユーロ削減する方策により、14年時点ですべての投資がグループ内で行えるようになるとしており、具体的には、エンジニアリング事業の下請け分を2013年までに7割削減するほか、パリ市内の事業所を統合。米国で検討中だった事業所数も削減することになる。また、補充目的の新規採用の凍結やドイツでの少なくとも1200名の人員削減を通じて、立て直しを図る考えだ。

同社のL.ウルセル最高経営責任者(CEO)は同計画の原動力は原子力と再生可能エネルギーの将来的な発展に対する確信に基づくと明言。これら2分野における開発の基盤は変わらず重要だと指摘しており、その理由として次の点を挙げた。

すなわち、新興国や発展途上国の経済成長などにより、世界のエネルギー需要は2050年までに倍増すること、化石燃料資源の枯渇や地政学的な不確実性によりエネルギー自給を目指す国々にとって、コストが安定的で予測も可能なエネルギー源の利用が好ましいこと、温室効果ガスの削減を通じた温暖化問題への取り組み――である。

このような状況から、ドイツが選択した脱原子力は稀なケースであり、世界中の大多数の原子力開発計画は実施が再確認されていると同社は指摘。国際エネルギー機関の予測より保守的に見ても、世界の原子力設備容量は年率2.2%で伸びて行く。福島事故により新規計画への着手が多少遅れることはあるが、2030年には5億8300万kWに到達するとの見通しを示した。

アレバ社によると、同行動計画は、(1)価値の創造を商業上の優先事項とする(2)投資における厳選主義(3)財政構造の強化――といった戦略的な選択事項に基づいている。そして、2015年までに業績を改善する必要があるため、「原子力安全」をグループ内の商業パフォーマンスにおける戦略的優先事項に据えた。

新しいジョルジュ・ベスU遠心分離法濃縮工場やその他の新しい施設の操業で事故ゼロを目標とするほか、第3世代炉として開発したEPR、ATMEA、KERENAを市場で最も安全な原子炉設計とするなど、提供する製品とサービスに安全を期す。既存炉に対しても安全性の向上を目的としたプログラムを開発済みで、福島事故後に各国の安全当局が実施した調査の結果に伴い、原子力市場の成長が期待されるとしている。


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