「原子力は今後も重要電源」 ECがエネ・ロードマップ採択

欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は12月15日、加盟各国へのコミュニケとして「2050年までのエネルギー・ロードマップ」を採択した。EUでは2050年までに温室効果ガスの排出量を90年レベルの80〜95%に削減すると約束しているため、ECはエネルギーの安定供給と競争力を保証しつつEUの炭素除去目標を達成する際にもたらされる課題を詳細に調査。同ロードマップは欧州における長期的なエネルギー対策の枠組策定の基礎になるとしている。

それによると、炭素除去目標の達成には、欧州の今後のエネルギー生産をほとんど炭素フリーとしなければならない。ECは加盟各国で民間投資のための安定した事業環境を生み出せるエネルギー選択が可能となるよう、(1)エネルギーの効率化(2)再生可能エネルギー(3)原子力(4)COの回収・貯蔵――という主要な炭素除去手段を異なる方法で組み合わせた7つのシナリオを分析。その結果、いずれの場合も以下の点が共通要素として明確に現れたとしている。

すなわち、すべてのシナリオで排出抑制目標の達成が技術的に可能であり、長期的には現在の政策より低価格になるということ。エネルギーの効率化と再生可能エネルギーが重要となり、電気の果たす役割も一層大きくなる。また、早めの投資が経済的に安上がりで、2030年までに必要なインフラの投資決定は今、しなくてはならない。スケール・メリットの活用も必要で、各国毎よりも、欧州全体で取り組む方が一層低コストで万全なエネルギー供給がもたらされる。その意味で、2014年までに欧州共通のエネルギー市場を完成させるべきだとしている。

原子力は低炭素電源

原子力について同ロードマップは「エネルギー転換プロセスの中で重要な貢献をする」と明言。福島事故後、いくつかの加盟国が原子力のリスクは受け入れがたいとして政策変更したが、その他の国は手頃で信頼性の高い低炭素電源として利用を継続している。今後、安全コストや廃止措置および廃棄物の処分コストで増加が予想されるが、新たな原子力技術がそれらへの取り組みを助けていくことになると指摘した。

シナリオ分析の結果、原子力はエネルギー・システムのコストと電力価格の低減に貢献し、今後も大規模な低炭素オプションとしてEUの発電ミックスに留まる。ECとしても加盟国が原子力の維持に前向きとなるよう、EU域内で最も厳格な安全性とセキュリティの基準が保証されるよう、その枠組強化を促進し続けたいとしている。


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