WH社製AP1000に設計認証 米国NRC 約30年ぶりに新規建設へ歩み 雇用、低炭素化に期待 ボーグル3、4号機で採用

米原子力規制委員会(NRC)は12月22日、修正を加えたウェスチングハウス(WH)社製AP1000設計に対し、新たな設計認証(DC)を発給した。これにより、ボーグル3、4号機建設計画を始め、米国で約30年ぶりとなる原子炉新設計画に米国初の建設・運転一括認可(COL)を発給する準備が整った。米エネルギー省(DOE)のS.チュー長官も、「オバマ政権とDOEは米国の原子力産業の再生を通じて数千名分の雇用を創出するとともに、低炭素で国産のエネルギーによる電力供給を約束する」と声明。同DCが米国における新世代の原子力発電所建設に向けて重要な前進となったことを明言した。

WH社がAP1000設計で最初のDC申請を提出したのは2002年のこと。構造を単純化させた固有の安全性を有する次世代設計として06年にDCが発給された。DCは15年間有効だが、NRCが飛行機の衝突事故に対する要求など新たな規制要求を出したことから、WH社は遮へい建屋の強度増強を含め、修正を施した設計について07年に改めてDCを申請していた。

今回NRCは、同設計が「放射性物質を多量に放出することなく航空機衝突による損壊に耐え得る」と評価。革新的な安全・セキュリティ機能などにより、十分な安全裕度を有していると保証しており、設計関係者らは、福島事故のような事象にも対応可能と認められたと受け止めている。

サザン社がジョージア州で進めているボーグル計画については昨年9月、NRCがCOL発給に必要な最終安全評価報告書(FSER)を発行した。同計画にCOLが発給されるのを見込んだWH社の親会社の東芝は、これを受けて昨年12月に3号機用復水器を出荷しており、同社としては米国の新設計画向けで初めての大型機器輸出を果たしている。

AP1000設計は、政府から83億3000万ドルの融資保証適用を受けてボーグル3、4号機計画のほかに、プログレス・エナジー社がフロリダ州で計画しているレビィ・カウンティ1、2号機計画、およびSCE&G社がサウスカロライナ州で進めているバージル・C.サマー2、3号機で採用が決定。これらはすでに契約・発注済みだが、そのほかにも、デュークエナジー社やフロリダ・パワー&ライト社らが進めている6基の新設計画でも、AP1000の建設を念頭においたCOL申請書がNRCの審査を受けている。

これらのうち、16年以降の完成を目指すボーグル計画では部分的な準備工事が09年から開始されており、AP1000採用計画の中で最も先行。同設計の「基準案件(R―COL)」に指定されているため、NRCの審査をフルに受けるが、後続の案件(S―COLに指定)は重複する部分の審査が省かれるなど、審査期間が大幅に短縮される見通しである。


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