処分場と中間貯蔵施設の立地で 同意に基づく選定勧告 米国ブルーリボン委の最終報告

米国の原子力発電所から排出される使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物(HLW)の管理処分対策を2年間にわたって審議していた政府の有識者特別(ブルーリボン)委員会(BRC)は1月26日に最終報告書をとりまとめ、エネルギー省(DOE)のS.チュー長官に提出した。

昨年8月の中間報告と同様、集中中間貯蔵施設と深地層処分場を早急に建設することや放射性廃棄物管理を専門とする連邦政府企業の創設など8項目を勧告。米国にとって使用済み燃料のリサイクルで政策的な判断を下すのは時期尚早であるとしたほか、廃棄物の長期的な隔離が唯一の責任ある管理方法であるため、深地層処分能力の確保は重要だと断言した。また、そのサイト選定は地元の同意に基づいて進める方式が不可欠と強調し、一から選定し直すよう提言する一方、具体的な候補地点やユッカマウンテンの適正については審議要件に入っていないとして言及を避けた。

米国には現在、6万5000トンの使用済み燃料が操業中あるいは閉鎖済みの原子力発電所75か所に保管されており、既存炉からは年間2000トン以上が新たに排出されている。使用済み燃料がすでに存在する以上、リサイクルしてもしなくても、いずれ永久処分施設は必要であり、そうした基本的で倫理的な義務を後の世代に押しつけないためにも、管理戦略の改善は喫緊の課題だとBRCは指摘。今回の勧告はオバマ政権がユッカマウンテン計画を停止して以降、行き詰まり状態にある管理政策を前に進めるとともに、安全かつ長期的な解決策と健全なサイト選定アプローチを示すものだと強調している。

BRCが打ち出した8項目の主要勧告は以下のとおり。すなわち、(1)廃棄物管理施設のサイトは、地元の同意に基づく新たな手法で選定する(2)放射性廃棄物管理プログラム専任の公社を新たに創設し、相応の権限と資源を付与する(3)事業者と需要家が電気料金を通じて払い込む廃棄物基金は放射性廃棄物管理計画のみの使用とする(4)少なくとも1つ地層処分場を早急に建設する(5)少なくとも1つ集中中間貯蔵施設を早急に建設する(6)これらの施設が利用可能になった時点で使用済み燃料とHLWを大量輸送するため体制準備を急ぐ(7)米国での原子力技術革新研究の継続と人材養成を支援する(8)安全確保や放射性廃棄物管理、核不拡散およびセキュリティ問題への国際的な取り組みで米国のリーダーシップを促す。

法制面での修正勧告

BRCはまた、これらを本格的に実行するには、放射性廃棄物法(NWPA)を始めとする関連法制に修正を加える必要があると指摘。ユッカマウンテンの処分場サイトのみ評価・認可するよう1987年に修正したNWPAを再度修正し、管理施設の選定・評価・認可手続きを地元の同意に基づく新たな手法とする。処分場の完成日程と関係なく、容量の十分な集中貯蔵施設を最低1つ、政府が設置できるよう修正することも必要だと明言。

また、DOEが負っている使用済み燃料等の管理責任を、独立の立場の政府公認専門企業に移すとともに、その監督メカニズムを設定しなくてはならない。廃棄物プログラム用に積み立てられた基金の残金270億ドルを同専門企業に移し、会計年度の予算プロセスと切り離すなど厳格に管理するには法制面で長期的な救済措置が必要であり、現政権と議会の関連委員会および連邦議会予算事務局には早急な対応を勧告するとしている。

同意ベースのサイト選定手続き

BRCが処分場と中間貯蔵施設のサイト選定で「明確な適応性がある地点で地元の同意に基づいた段階的な手法」を取るようを提言したのは、地元ネバダ州の反対により中止につながったユッカマウンテン計画の反省から。その関連で、米国内のニューメキシコ州での超ウラン廃棄物処分施設(WIPP)の立地、フィンランドや仏国、スウェーデンなどで廃棄物処分場のサイト選定に成功した例を挙げている。

BRCとしては、この方式がいらだたしいほど時間のかかるやり方である点も認めている。が、この課題への取り組みに近道はなく、これを避けようとすれば一層の遅れを招くと強調。明確な目標期日の設定という面で葛藤の生じる勧告だが、諸外国では多くの場合、特定の期日ではなく目標とする時間枠を設定しており、地層処分場のサイト特定および許認可手続きには15〜20年、中間貯蔵施設には5〜10年を要するかもしれないと説明している。

原子力産業界の反応

米国原子力エネルギー協会(NEI)は、最終報告書の勧告が米国の廃棄物管理計画の改善・再活性化につながるとして、全米公益事業規制委員協会(NARUC)など5つの原子力産業関連団体とともに歓迎の意を表明した。

BRCが打ち出した勧告8項目の中でも、次の3項目については特に、高い優先順位が与えられるべきとの認識。すなわち、(1)放射性廃棄物基金の残金と消費者が原子力からの発電電力に支払う料金が確実に廃棄物管理プログラムに利用されること(2)早急に複数の集中中間貯蔵施設建設に取りかかること(3)必要な権限と資源を有する廃棄物管理専門の連邦企業の創設――だ。

もしこれらが短期間に実行されれば、処分場の開発推進と並行して、持続可能な使用済み燃料管理プログラム策定のための盤石な基盤が築かれるとNEIは評価。原子炉からの発電電力に対し年間7億5000万ドル払い込まれる料金の使用を、本来の目的である廃棄物プログラムのみに限定するための短期的アクションをBRCが示したとしている。

NEIはまた、処分場が完成する前、すなわち今後10年以内に集中中間貯蔵施設の受け入れ自治体を見つけるための活動促進が図られると確信。同施設によって、当初1998年までと規定されていたDOEの法的な放射性廃棄物引取義務がようやく履行されることになるとコメントした。

なおNEIは、処分場と貯蔵施設のサイト特定がBRCの審議課題でなかった点に理解を示しながらも、ユッカマウンテンの処分場としての適性を明確にするため、米原子力規制委員会による認可申請審査が継続されることを今後も信じるとしている。


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