米国で34年ぶり認可 ボーグル3、4号が本格着工 福島事故検証後に設計承認 WH静的安全設計を採用

米原子力規制委員会(NRC)は9日、新たな原子力発電許認可制度になってから初となる建設・運転一括認可をサザン社が南東部ジョージア州で進めているボーグル原子力発電所3、4号機建設計画に発給する判断を下した。新規建設計画としては1978年に最後のシアロンハリス1号機が着工して以来、34年ぶりの建設認可。10営業日後の正式発給を待って、サザン社では米国で初めてのウェスチングハウス(WH)社製AP1000・2基を2016年と17年に運開させるため、140億ドルに及ぶ本格的な建設作業を開始する。世界最大の原子力発電国の米国が新たな選択肢として原子力発電を再び選択し、実際に建設に着手したことの意義は極めて大きい。

AP1000は現在東芝の子会社になっている米国WH社が開発した最新鋭のPWRで、外部動力を使用しない静的安全設計を採用、NRC内の専門調査チームが福島第一原子力発電所事故を受けた原子炉の安全性強化策の検討を行った上でも、昨年末に付帯条件なしに設計承認されている。中国では現在、先行して4基のAP1000が建設中だ。

米国内では電力事業者から28基の建設・運転一括認可申請がなされている中で、うち14基がAP1000で、WH社は6基分の設計・調達・建設を含む建設プロジェクト一括契約(EPC契約)を締結済みだ。

米国では現在104基の原子力発電所が稼働し、建設工事が一時期中断していたワッツバー2号機の完成作業が進められている。

これまでの経緯

米国では1979年の第2次石油危機に起因する原油価格の高騰により電力需要が伸び悩み、火力を始めとする多くの発電所建設計画がキャンセルとなった。また、同じ年に発生したTMI事故の影響は、それ以降、原子炉の新規発注を途絶えさせるに至っていた。

2002年になると当時のG.ブッシュ政権が、「2010年までに新たな原発の建設と運開を目指すイニシアチブ」を提案。運転開始までの許認可リスク低減とプロセス簡素化のため1989年に規定された連邦規則の下、(1)事前サイト許可(ESP)(2)標準設計認証(DC)(3)建設・運転一括認可(COL)――を柱とする新たな許認可制度の実証が2003年から始まった。

サザン社の子会社がボーグル計画でCOL申請したのは08年3月のことで、原子炉安全諮問委員会(ACRS)は同計画の安全面およびNRCスタッフによる安全評価報告書を審査。NRCは11年1月にその審査結果を受け、同年8月に安全評価報告書の最終版を発行している。また同計画の環境影響審査は昨年3月に完了し、NRCは最終補足環境影響声明書を発行していた。

NRCはまた、昨年末に同計画で採用されているAP1000の修正版に新たなDCを発給しており、これにより同計画へのCOL発給準備が事実上整った。この関連で、同じくAP1000の建設を想定したV.Cサマー2、3号機計画でも、NRCはまもなくCOLを発給すると見られている。(=3面に経緯表)

なお、原発新設計画で最大のネックとなっている建設費に関しては、米エネルギー省(DOE)が10年2月、原発建設計画として初めて83億3000万ドルの政府融資保証適用を決定。建設期間中の財政コスト回収も地元州政府から認められるなど、資金調達プランも万全となっている。

サイトでの事前準備作業は部分的な建設準備作業実施許可に基づき、すでに09年8月から開始。日本のIHIがPWR事業として初めて、10年8月から部分毎に出荷を開始した格納容器底部の組立て(=写真)も現地で行われている。


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