英仏首脳がエネルギー宣言 民生用原子力の協力強化

英仏両国の首脳は17日、民生用原子力発電を長期的に安全・確実かつ持続可能で手頃価格なエネルギーとして今後も開発していくことを確認し、同分野における協力強化で両国が画期的な合意に達したと宣言した。同日、仏電力(EDF)は、英国の原子炉新設計画のうち、ヒンクリーポイントC・サイトに欧州加圧水型炉(EPR)の2基を建設する計画で、初の準備工事契約を英国企業と締結。具体化している5地点の計画だけで投資総額600億ポンド、創出される雇用は3万人分という英国の一大事業に対し、原子力を主力輸出産業とする仏国は、第4世代原子炉の開発や人材育成についても緊密に連携する。英国も仏国との協力を通じて国内原子力供給チェーンの構築を目指すとともに、経済的な恩恵を追求していくとしている。

この宣言は、英国のD.キャメロン首相がパリでN.サルコジ大統領と会見した際(=写真)、その他の協力分野における合意とともに発表された。

エネルギー分野の協力強化の理由として両国は、低炭素なエネルギー供給構造への転換、合理的なコストによる供給保障、産業競争力の強化、温室効果ガスの排出量削減などを列挙。こうした目標の達成には、再生可能エネルギーの活用とともに原子力の開発が不可欠と確信した上で、両国は包括的な連携枠組の中で協力し、双方の国内で活発な経済活動と雇用を生み出すと決断した。

原子力開発における協力では、発電所を最も安全で効率的かつ確実な方法で管理制御することが共通の決意だと明言。国際レベルの原子力供給チェーンで英仏産業界の台頭を目指しており、EDFが英国で建設を計画しているアレバ社製EPRに、英国の規制当局が昨年12月に暫定的な設計承認を与えたことは、この目的達成への重要な一歩だと強調している。

今回、両国企業が締結した一連の契約および協定に続いて、両国は今後、安全で持続可能な核物質と放射性廃棄物の管理を含めたバックエンド分野でも協力拡大に向けて協議していく方針だ。

また、絶対的な優先事項である原発の安全性に関しては、改善の継続が協力の中心的部分を占めると強調。福島事故は両国に対し、西欧原子力規制者協会(WENRA)の事業を通じて世界中の原子炉、特に新設炉で高いレベルの安全性を追求していく必要性を喚起したとしている。この関連で両国は、欧州共通のスペックで行われている原子炉の安全評価を、国際原子力機関の行動計画に従って世界中に拡大していくべきだと訴えた。

同事故からの最大の教訓としては、サイト外での緊急ユニット配備も含め、いかなる原因による緊急事態にも備える必要性という点で両国は一致。一事業者の資源は可能な限り他業者の支援にも活用すべきであり、そうした資源を事故時に効果的に動員可能とするため、両国は事業者レベルの介入能力に基づき原子力緊急時対応について二国間で効果的に調整する新たな枠組の中で協働していくとしている。

EDFが英国サマーセット州のヒンクリーポイントC建設計画関連で締結した契約は以下の通り。

▽サイトの掘削・地ならし、および道路などのインフラ整備で英国の土木建築企業キアBAM社と1億ポンド以上の準備作業契約。今春に作業開始へ。

▽サマーセットに世界規模の訓練センターを設置するため、英国のブリッジウォーター大学と1500万ポンドの投資契約。

▽原子力系統設備と計装制御(I&C)系の納入、その契約交渉完了までの期間確認等でアレバ社と了解覚書。EDFは今年末までに最終投資決定へ。

そのほか、英仏間の新たな原子力協力は以下の通り。

▽既存炉および第4世代原子炉の研究開発で、仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)と英国立原子力研究所(NNL)が共同研究プログラム実施へ。

▽英国のアメック社とロールス・ロイス社がCEAの第4世代の新型ナトリウム冷却高速炉「ASTRID」の原型炉開発で協力。

▽アレバ社とロールス社は昨年3月に結んだ協力契約に基づき、新たな協力強化契約締結。ロールス社は英国におけるEPR建設計画のうち、最初の2基について機器製造とエンジニアリング・サービスを提供、最終的に4基分・4億ポンドの契約締結を目指す。


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