融点低い液体Liを利用 BNCT 中性子発生ターゲット開発

東京工業大学原子炉工学研究所と助川電気工業は2月20日、陽子加速器によるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に利用可能な液体リチウム型中性子発生ターゲットの開発に成功したと発表した。BNCTは、副作用が少なく質の高いがん治療法として期待されており、日本原子力研究開発機構の研究炉「JRR―4」による臨床研究がよく知られているが、中性子発生に原子炉を必要とするため、利用が限定されていた。今回の開発により、都市部の病院にも設置が可能となり、BNCTの広範な普及が期待される。

BNCTは、ホウ素化合物を選択的にがん細胞に集積させ、ホウ素が中性子と反応して発生するアルファ粒子とリチウム原子核の両粒子の飛程が、細胞サイズと同じ性質を利用して、周囲の細胞に影響することなく、がんを細胞レベルで破壊するものだが、中性子源に原子炉を利用するため、安全規制の関連などから、展開が進まぬ状況にあった。

今回の開発内容は、加速器から引き出された陽子ビームを、リチウムやベリリウムなどのターゲットに照射して、中性子を発生されるものだが、得られる中性子の最大エネルギーや生成効率の条件から、BNCTにはリチウムの利用が有力との研究結果を得た。リチウムは、融点が低く固体と液体のどちらの状態でもターゲットに利用できるが、開発グループでは、11年3月からプロトタイプ装置の設計製作を開始し、実用的な運転条件において、膜厚0.6mm、流速30m/sのリチウム液膜流を、曲率半径10cmの湾曲板上に幅50mm×長さ50mmの領域に安定形成することに成功した。このリチウム液膜流は、別途製作する陽子加速器から得られる直径3cmの陽子ビームの照射に対応でき、BNCTとしての利用方法、性能からみても、世界的にオリジナルなものと評価しており、本技術は、医療以外にも非破壊分析など、産業分野での応用も期待されている。


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