福島事故を出発点に 有識者ら 提言を首相に提出学識経験者や産業界関係者で構成する「エネルギー・原子力政策懇談会」(有馬朗人会長)は、同会有志による提言「福島からの再出発と日本の将来を支えるエネルギー政策のあり方」を取りまとめ、16日、野田首相に提出した。提言は、同懇談会が昨年3月の東日本大震災以降の混迷の中で、わが国の政策のあるべき方向性をめぐって重ねてきた議論を取りまとめたもの。 提言では、まず福島事故と同様の事故が発生しないよう、その経験を世界と共有することが、今後のエネルギー・原子力政策の出発点であることを強調した。 国民生活の安定や産業競争力の維持にはエネルギー安全供給が重要課題とするとともに、わが国が世界をリードしてきた地球温暖化対策や環境問題にも背を向けることはできないと指摘し、科学的知見に基づき冷静なエネルギー政策の必要性や、今後のエネルギー構成について現実を踏まえた責任ある議論を求めている。 原子力発電所の再稼働については、全く再稼働が実現しなければ今後の電力需給は極めて厳しいとの認識を示し、原子力を火力で代替することによるコストの大幅増で産業空洞化が加速する恐れを指摘した。ストレステストやIAEAの助言を踏まえ、安全性を確認した上で、官民が協力して早期に再稼働させるべきだと強調している。 新規制で導入される原子力発電所の40年運転制限に関しては、科学的・合理的に検討した上で国際標準も十分に踏まえ延長基準を確立すべきとし、今後の厳格な安全基準をクリアする新技術・安全対策を導入した原子力プラントによるリプレースを今後のエネルギー基本計画に位置づけるよう求めた。 エネルギーの需要家の選択は重要な考慮要因としながらも、国家としてエネルギー安全保障の議論を尽くし、エネルギー政策における総合最適を目指すべきとしている。 最先端の原子力技術を保持しているわが国が安全な次世代原子炉・小型炉等の技術開発面でも責務を担うことや、原子炉の安全確保、長期にわたる廃炉事業等の課題に対応するためにも質・量の両面で人材育成の努力を継続することも強調した。 提言には、今井敬・原産協会会長、白井克彦・前早稲田大学総長、尾池和夫・前京都大学総長など、計32名が名前を連ねている。 |
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