「原子力の未来、明るい」 ロシアの海外展開企業が講演会

ロシアの総合原子力企業であるロスアトム社は昨年8月、原子力発電開発の国際展開を促進するマーケティング会社「ルスアトム・オーバーシーズ社」を起ち上げた。原子力の軍事利用部門とともに民生用部門の全般を傘下に置く国営企業の利点を生かし、世界各地の原子力発電所開発で主導的立場を確保するため、ルスアトム社を通じて新規導入国のインフラ整備や人材育成も含め、一貫した支援体制を整える考え。福島事故後も原子力国際展開の本格的な拡大を目指し、本腰を入れて取り組む方針だ。

そうした活動の一環として、同社のA.カリーニン社長(代行)らは9日に原産協会を訪れ、講演会を通じて同社の全貌を紹介した。

ルスアトム社の資本金は約10億ルーブルで、職員数は現在40名程度。ロスアトム社の必要部門を統合・有効活用しつつ300名まで増員していく予定で、システム・インテグレーターとしての機能を駆使してロスアトム社の営業活動を実施するとしている。

カリーニン社長はまず、福島事故後のロシアでは建設中の9基に加え、2030年までに24基を国内で建設するという計画に変更はないと説明。いくつかの国では脱原子力政策が取られたが、今後の原子力発電需要に対する影響は6〜8%程度とするロスアトム社の認識を伝えた。また、福島事故のみの影響というより、近年の世界的な財政危機の影響も大きいと明言。今後は途上国や新興国での需要により原子力発電開発の未来は明るいと指摘した。

実際、ロシアは現在、ベトナムや中国、アルメニアなど30件の原子炉建設計画で協力しているほか、カザフスタンやヨルダンなど23件についても入札交渉中。2030年までにサウジアラビアや南ア、ブラジル、マレーシアなどでさらに33件の可能性があると見込んでいる。

これらの受注を成功させるには、ベンダーが顧客の要望、要件に沿ったサービスを提供することが不可欠としており、ロスアトム社ではそのために以下の5要素からなる仕組みを開発したと説明した。

すなわち、(1)「エネルギー・ソリューション」により、第3世代原子炉など近代的な設計の建設および運転・維持管理を支援(2)「産業ソリューション」として原発の機器製造の10〜15%を地元供給業者に発注し、地元に技術を移転(3)トルコ、ベトナムの例に見られるように、「財政ソリューション」をBOO(Build Own Operate)方式の建設で提供し、政府間合意の枠組で建設費を融資する(4)新規導入国で特に必要な法整備など、規制基盤の構築・整備および廃棄物の管理を支援する(5)ロシアの専門家による地元での教育訓練プログラムや訓練センターで人材育成を、また、原子力の利点を説明する方法など、関連知識と情報の提供を通じてPAの改善方法も指導する。

ルスアトム社ではこうしたソリューションを統合するとともに、世界各地に置かれたロスアトム社の事務所を同社の事務所に変え、そのネットワークでマーケティングを展開。BOOプロジェクトの管理会社として、すべての投資案件のみならず、顧客の原子力インフラ整備やグローバリゼーション計画を管理していくことになる。

Q&Aでは、トルコで投資する200億ドルの回収見通しについて会場内から質問があった。カリーニン社長は「トルコの電力市場を徹底調査した結果、専門家は原発完成後15年間にトルコが買い取る固定電力価格として12.35セント/kWhという数値を算出した。残りの半分は市場に出す予定だが、その際は最大16セントという高い料金が期待できる」と回答。20年未満で投資額が回収可能との予測を明らかにした。


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