米国URS社上級アドバイザー ミシェル・ガーバー 親身に正直に話を聞く

福島第一原子力発電所の事故は、政府と業界上層部に対する信頼性の低下を招き、ステークホルダーからの厳しい要求に直面することとなった。

冷戦終結時に米国も似た問題を経験した。69年前に創設されたプルトニウム生産施設であるハンフォード・サイトは、40年以上にわたって米国最大の原子力国防サイトだったが、操業中に放射性物質と化学放出物を大気や土壌、地表水や地下水にまき散らしていた。当初放出について周辺住民は知らされておらず、操業の後半期には部分的に知らされるにとどまった。1986年以降、こうした事実を示す文書が公開され、地域住民と米国民は放出物の規模と厳重な秘密主義の双方に驚き、激怒した。その後、米国が除染を開始できるようになるには、国民の信頼を取り戻す長いプロセスが必要であった。

ハンフォードで住民との相互理解に成功したアプローチ例は(1)話を聞く!(2)親身になる(3)正直になる――ことだった。また自分の父の言っていた「人は相手がしたことや言ったことはほとんど忘れるが、どんな気持ちにさせられたかは絶対に忘れない」ことも大事だ。

伝える内容については、最悪の場合の知らせを最初に伝えること、ウソや隠し事をしないこと、データや解決策のギャップや未確認点などについて尋ねられる前に気づくことが大切である。

また、激怒は人々が恐れていることを表していることに留意し、必要なら内容を繰り返すこと、簡潔に上から目線にならず話すことも重要だ。

そして、動揺するような状況で住民の信頼を得にくい「専門家」(特に技術専門家)にならないこと、汚染の道徳的重要性を認めること、電力不足などの不安を住民たちと共有していることを強調するのも大事である。

米国の経験は日本に役立つはずだ。国民の信頼と協力を取り戻すのに遅すぎることはない。今までに問題があったとしても、将来国民との間に溝が生じるのを回避して、和を取り戻す機会はある。機能的なステークホルダー参加を促し、すると言った約束を必ず果たしていくことが大切だ。


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