A.シンパ―英国原子力廃止措置機関戦略・技術担当取締役に聞く 英国の原子力戦略や日英廃炉協力について 原子力推進へ責任ある負の遺産処理 地元社会の関与が重要

福島第一発電所の廃炉はわが国にとり今後の大きな課題だが、原子力発電の歴史が古く廃炉の経験も豊富な英国は、日本との協力を進めたい意向を示している。その英国はまた、キャメロン首相が4月の日本訪問の際にも強調したように、福島事故後も原子力発電所新設を推進する方針を堅持している。原産新聞では、英国原子力廃止措置機関(NDA)のA.シンパー戦略・技術担当取締役が、東京電力との廃炉協力に関する協議のため4月に来日したのを機に、両国の廃炉での協力や英国の原子力戦略について話を聞いた。

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―東電との協議でNDAからどんな点をアドバイスしたか。

シンパー 2つの経験について伝えた。1つは、古い炉等の廃止措置において、包括的に技術を用いて高線量の放射性物質を取り出した後、適切に貯蔵・管理している経験だ。もう1つは、汚染土壌の浄化について。我々には化学物質や放射性物質で汚染された土地を浄化し一般の用途へ使用可能にした経験がある。土壌浄化の問題では、技術的な課題もさることながら、地元コミュニティーやステークホルダーが関わることが重要というのも我々が伝えたい点だ。

―福島第一の廃炉戦略は国内機関だけで策定し、海外の参画が排除されているとの指摘をどう思うか。

シンパー 各国独自の体制や考え方があると思うが、英国の場合は、長期戦略を立てる部門と日々の業務に携わる実務部門を明確に分けたことが成功の要因だ。それぞれ必要なスキルや事業管理の手法も違うからだ。福島第一の廃炉プロジェクトに参画したいと考える優れたソリューションや技術をもった企業が世界中にいることは驚くべきことではない。福島の廃炉の取り組みは始まったばかりの段階だが、長期的に見れば、我々にも参画する機会は十分ある。

―負の遺産を処理し将来に向け原子力を進めるというNDAの事業に対して国民はどう受け止めているか。

シンパー 国民の見方としてはNDAが真摯に業務に取り組んでいると評価してくれているのではないか。当然ながら、批判を受けることもあるが、批判者もステークホルダーと考え、オープンに対話していくこととしいている。単にNDAの事業を説明すればよいのではなく、より大切なのは地元コミュニティーを意思決定のプロセスに取り込むことだ。

―NDAの取り組みの1つである高レベル廃棄物処分場の立地選定プロセスについては。

シンパー 英国では処分場立地には時間をかけてアプローチしている。今日では自治体から自発的に手を挙げてもらう方法を取っている。自治体は処分場になった場合のメリット・デメリットについて中央政府と対話する。現在、3つの自治体が手を挙げており、処分場選定の次のステージに参加するかを中央政府と対話している段階だ。3自治体ともすべてセラフィールドを含む地域であり、原子力のことをよく理解している自治体だ。

―昨年12月に英政府は長期的プルトニウム管理方針について打ち出したが。

シンパー プルトニウム在庫量を責任をもって利用し減らしていくため、MOX燃料として再利用していくのが政府の方針だが、課題も多い。つまり、MOX加工施設の整備やMOX燃料を新規炉で燃やすための条件を整える必要がある。そのために我々としては十分な時間をかけている。計画されている新工場で加工されたMOX燃料は、将来の新規炉で燃やすことになるが、それには適切な電気事業者をパートナーとして選ぶことも含め十分な対応が重要だ。

―福島事故後も、英国は原子力発電所新規建設の政策を進めており、国民も受け入れているようだが。

シンパー 低炭素社会の構築や経済成長のためには、安定的で信頼性の高いエネルギー源を確保することと偏ったエネルギー依存に陥らないようにすることが重要との認識が英国民の間にはある。再生可能エネルギーは、まだ安定性に欠けるという点からも、原子力は今後も必要な電源と国民は理解している。福島事故の受け止め方は日英で違うと思うが、事実に基づき、正確で科学的な議論と検証を行うことが国民からの支持につながる。


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