ヤツコ委員長が辞意表明 NRC内での指導力に批判噴出

米原子力規制委員会(NRC)のG.ヤツコ委員長(=写真)は21日、後任が議会上院の承認を得次第、辞任するとの意向を表明した。議会関係者から「尋常でない」と評価された同委員長の管理スタイルは議会の聴聞会を始めとする様々な場で取り沙汰されており、共和党議員を中心に辞任を求める意見が噴出。任期を1年残しての辞意表明はこうした批判を考慮した結果と受け止められている。

NRCにおける同委員長のリーダーシップが疑問視された端的な例は、同委員長を除くNRCの委員4名が昨年10月、連名でW.デーリー大統領補佐官に宛てた書簡だ。委員達はその中で、同委員長の「問題の多い気まぐれな行動がNRC内の職場環境を寒々しくし、重大な被害を及ぼしている」と指摘。具体的には、(1)上級スタッフを脅すなど極度の恐怖感を与えた(2)原子炉安全諮問委員会を恫喝して福島事故分析の一部の審査作業を阻もうとした(3)NRCの法的に定められた機能に反し、多数派見解を無視した――などを挙げていた。

民主党員のヤツコ氏は2005年から8年近くNRC委員として務めてきたが、3年前にB.オバマ大統領が民主党政権を発足させた直後、同大統領の指名により委員長に昇格。強硬な反原子力派のH.リード上院院内総務の科学政策アドバイザーを務めた経歴もあり、原子力にはやや懐疑的な見解を持つ。2010年には、ネバダ州選出の同院内総務の意向を受け、同州ユッカマウンテンで米エネルギー省が進めていた高レベル廃棄物処分場建設計画について、5名の委員中2名の反対を押し切り、技術審査活動の停止をNRCスタッフに指示した。

また、ボーグル3、4号機とV.C.サマー2、3号機計画の建設・運転一括認可(COL)審査では委員5名中ただ1人、認可発給に反対。福島事故後の新要件実施を事業者に条件付けるよう主張するなど、慎重な姿勢を貫いていた。

NEIのコメント

ヤツコ委員長の辞意表明について、米原子力エネルギー協会(NEI)のM.ファーテル理事長兼CEOはまず、「安全性という共通課題を達成する最善の方法について産業界と委員長の意見は食い違っていた」と認めた。

その上で、この課題を産業界と議論するための意欲やコミュニケーション手段を保持し続けたことは評価できると明言。特に、福島事故後13か月間にわたった同委員長の労をねぎらうとともに、ホワイトハウスには早急に後任を指名するよう促している。


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