「40年運転制限」再考を 原子力学会 国会審議に向け提言示す

日本原子力学会は7日、現在行われている原子力安全規制に係る法案の国会審議に向け、最大限考慮し熟議が尽くされるべき論点をまとめた提言を発表した。

学術・専門家集団の立場から、世界の先進モデルとなる規制制度・組織の構築を目指し、独立性・透明性の確保、規制権限の統合・一貫化、高い専門能力の実現に努めるよう求めているほか、今回の大規模災害を踏まえ、危機管理組織と原子力規制機関との役割分担・連携の必要、また、政府提出法案に盛り込まれている「40年運転制限制」に関し、科学的・合理的な観点から、見直すよう訴えている。

「40年運転制限制」については、「専門家も含めた特段の議論もなく提案されたとの感をぬぐえない」とした上で、国際動向も見据えた場合、原子炉の寿命は60年もしくは、さらに長期との見方も示したほか、現行制度における定期安全レビューに基づく高経年化技術評価では、安全性向上の観点から、「厳しい措置を講じている」といった考えから、「不合理なメッセージ」を世界に発信しかねないとの懸念を述べている。その上で、「40年運転制限制」の採用に当たっては、合理的・科学的な議論、説明がなされるべきと、強く訴えている。

提言のポイントは以下の通り。

▽国際的に合意された基本安全原則などの規範に基づくとともに、今後の規制制度や世界的な先進モデルとなるような組織と制度の構築と運用を図るべき。

▽原子力規制機関は、独立性と透明性の確保、規制権限の統合化・一貫化および高い専門能力の実現に向けて、既存の省庁制度の枠にとらわれない理想的な組織と要員構成とすべき。

▽原子力規制機関は、平常時のみならず緊急時においても、独立性を維持し、その専門的判断は最大限政府の行動に反映されなければならない。併せて、国家的危機に一元的に対応する専門組織の整備であり、そのような危機管理組織と原子力規制機関とが明確な役割分担の下で密接な連携を図ることが重要。

▽原子力規制制度においては、国民、原子力事業者、専門家など、すべての関係者にとって、健全な意見交換と安全向上に向けた不断の努力が喚起されるよう、合理的・科学的な制度設計と透明性を持った運用の仕組みづくりがなされるべき。

▽これらの観点から、「40年運転制限制」は、原子力安全規制の合理性・科学性に疑問を抱かせるものであり、国際的に科学的・合理的な検討を経て運用されている制度も踏まえ抜本的な見直しが必要。

▽今回の法律制定後、できるだけ早期に、国会および政府の事故調査委員会の報告、IAEAによる規制制度のレビュー結果を、組織や運用面も含めた制度の改善へ積極的に反映すべき。


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