事故原因の本質検証へ 国会事故調 第2次論点整理

国会の東京電力・福島原子力発電所事故調査委員会は9日、第19回会合を参院会館で開き、6月末にも取りまとめる報告書作成に向けた第2回目の論点整理を以下のように行った。

【論点1】 事故対応において、首相官邸が過剰な介入を行ったのではないか。

【論点2】 官邸を含めた危機管理体制の抜本的な再構築が必要ではないか。特に初動の重要性から、事故発生時に直ちに対応できる危機管理体制作りが求められているのではないか。

【論点3】 原子力災害が発生した場合、すなわち緊急時、特にシビアアクシデントが発生した時には、オンサイト(発電所内)については事業者が責任をもって対応することを原則とし、オフサイト(発電所外)については政府等が責任をもって対応することを原則とするべきではないか。また、今回の事故の教訓を踏まえ、政府は事故対応にあたり、指揮命令系統を一本化するべきではないか。

【論点4】 原子力災害が発生した場合、すなわち緊急時には、事態の進展を先取りした、迅速かつ的確なリスクコミュニケーションが不可欠ではないか。緊急事態にあたって、事故現場での事態確認ができないとして、確実な情報のみを発信するという平時の対応をし続けたことが、被災住民の避難にも甚大な混乱と被害を引き起こしたのではないか。

【論点5】 原子力災害における各事象が急速に進展する場合、初動の避難指示にあたっては緊急時迅速放射能環境予測ネットワークシステム(SPEEDI)の活用は困難ではないか。

モニタリング手法の多様化と測定地点の多数化・分散化に努めるべきではないか。政府の中ではSPEEDIの活用方法についての認識が共有化されておらず、住民にもその機能が正しく伝えられていなかったのではないか。

【論点6】 全体を通じての認識として、これまで原子力の安全の議論はなされるが、住民の健康と安全確保という視点が欠けていたのではないか。その結果、安全規制において、深層防護の第4層にあたるシビアアクシデントの対応、第5層にあたる防災の観点が欠落し、被害の拡大を招いたと考えられる。

リスクコミュニケーションにおいても混乱を防ぐという名のもとに情報発出側の責任を回避することに主眼が置かれ、住民の健康と安全は顧みられなかった。今後の組織、危機管理の制度設計においては、住民の健康と安全確保の視点を第一に考えるべきではないか。また国民の命を守るという目的から見ても、発電所現場の作業員の安全を守りきることが重要ではないか。

【まとめ】

現時点で、これまでの委員会における参考人聴取等により明らかになった重要な論点の概要を整理したものである。

国会事故調は、国会事故調が国会に設置された趣旨を踏まえ、引き続き、事故原因の検証及び事故防止対策の検討に加え、政策・制度の枠組みの問題、国会による行政の監視に関する機能の問題など、事故原因の本質及び背景を含めた各問題点の検証を行い、委員会法上の責務を果たしていく。

(4面に住民調査結果)

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