国会 事故調が住民調査 政府からの情報は遅れ混乱 避難住民アンケート 福島第一事故情報も不十分

国会の東京電力・福島原子力発電所事故調査委員会は9日、第19回会合で、同事故による避難住民に行ったアンケート調査結果を公表した。

同調査は事故から1年後の今年3月から4月にかけて、避難を行った12市町村の約5万5000世帯のうち、市町村別に無作為抽出した約2万1000世帯を対象に行い、約1万600人(回収率約50%)から回答があった。うち8073人から自由回答欄への記述があり、今後の避難対応の改善に向けた避難住民の関心の高さを伺わせた。

調査分析を行った同事故調では、(1)政府の事故情報の発信・伝達の遅れがその後の混乱につながった(2)住民から見ると、避難指示が場当たり的で、何度も避難した人、線量の高いところに避難した人、着の身着のままで避難した人などが続出した(3)アンケートからは、避難を強いられた方々の苦悩が伝わってきた。未だに問題は解決していない。早急な対応が求められる──と総括している。

主な具体的な項目は、次の通り。

【事故情報の伝達について】

▽昨年3月11日15時42分に原子力災害対策特別措置法10条通報、16時45分に15条報告、19時03分に緊急事態宣言が出されにも関わらず、住民の認知度は全般に極めて低かった。

▽同じように避難を余儀なくされた地域であっても、原発からの距離によって事故情報の伝達速度に大きな差が発生した。

▽事故を知った情報源は、自治体あるいは防災無線、警察からの連絡で知った住民は双葉・楢葉では40%を占めるが、南相馬市、飯舘村、川俣町では10%に留まる。

【避難指示について】

▽避難指示は発令後数時間のうちに住民に伝えられたが、実際は事故の状況や住民の避難に役立つ情報は得られていなかった。その結果、着の身着のままの避難が続出した。

【自主避難について】

▽30km圏内に対して3月15日11時に屋内退避指示、3月25日に自主避難要請が出されたが、政府の指示の遅れによって、自主的に避難を行った住民が続出した。

▽飯舘村、川俣町においては、線量が高いことが明らかになったにも関わらず、計画的避難区域の設定が遅れた。

▽政府の高線量地域の避難区域設定の判断が遅かったのでないか。

【高線量地域への避難について】

▽浪江町の住民の約50%が、高線量地域へ一時避難してしまった。

▽モニタリング情報の開示が遅かったのではないか。

【避難区域の拡大と多段階避難について】

▽福島第一・第二原子力発電所に近い双葉町、大熊町、富岡町、楢葉町、広野町、浪江町において、70%超の住民が4回以上の避難を行った。

▽原発に近い地域の住民ほど何度も避難しなければならないような避難指示のあり方は問題ではないか。

【事前の備えについて】

▽立地町村であっても、原子力発電所の事故の可能性の説明はほとんどなされず、原子力災害を想定した避難訓練の参加者も極わずかであった。事前に原子力災害を想定した避難訓練を受けていた住民は15%以下、事故の可能性の説明を受けたことのある住民は10%以下であった。

避難指示情報は主に自治体から数時間のうちに

【避難指示の時刻、情報源(=左の2グラフ)】

避難指示は発令後数時間のうちに、主に自治体からの連絡によって周知されており、地元の自治体と住民による情報伝達力の高さが表れた。

ただし、政府から自治体への避難指示の連絡がなかった自治体があり、政府から自治体への避難指示の伝達には問題があった。


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