議論国際的視点で 日本国際フォーラム エネ政策に提言

日本国際フォーラムは18日、政策提言「グローバル化時代の日本のエネルギー戦略」を発表した。「エネルギーは国家・社会の存立の基盤」との考えのもと、原子力災害発生以降、「まず脱原発ありき」の結論が先行し、冷静なエネルギー安全保障の戦略的議論ができていないことを危惧しつつ、同フォーラム・伊藤憲一理事長率いる政策委員会が、各界有識者らによる署名とともに、今後、日本のとるべき政策の方向性として、計10項目の提言を示したもの。

今回提言ではまず、原子力事故を受けて活発化している安全性の向上や、電力事業のあり方に関する議論は、あくまでエネルギー安全保障に関する戦略的議論と一体的になされるべきと主張し、さらに、エネルギー資源はグローバル市場から調達されることを認識した上で、「世界の中の日本」という視点を持つよう訴えている。一方で、産油国を有する中東情勢の不安定化、資源をカードに使った外交リスクなど、地政学的状況を背景に、「中短期的には、より経済性を強めた再生可能エネルギーに、より安全な原子力を組み合わせたベスト・ミックスの形で包括的エネルギー安全保障の体制を構築するしかない」として、わが国のエネルギー戦略の方向性を、「限られた狭い選択肢の中で出口を探さざるをえない」とした。さらに、原子力に関する世界の潮流は、3.11以降も消極姿勢には転じておらず、むしろ、米国、英国、フランスなどの主要国では、福島事故の教訓を受けて、自国の原子炉の安全性と防御性を強化し、新設を進めているほか、新興国でも、積極的に原子力を導入する動きがあり、これらは、世界的に地球温暖化防止の流れとも連動していると述べ、具体的政策提言につなげている。

提言はまず、「世界的なエネルギー安全保障環境作り」を第一に掲げ、エネルギーの安定的供給を巡る国際的取組に、わが国が積極的に参加するよう促している。国内の原子力発電に関しては、再生可能エネルギーや火力発電への代替は困難なことから、安全性確認と施設の強化、および運営の管理体制改善を急ぎ、「早急に再稼働すべき」と述べ、また、わが国の原子力に関する人的・技術的資産を「国際公共財」と評価した上で、事故の教訓を活かし、世界の原子力安全強化に貢献すべきと訴えている。その他、温室効果ガス削減のための原子力協力、核融合エネルギーの実現にも言及した。

本提言は15日、野田佳彦首相に提出されている。


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