カナダのダーリントン増設計画 WH社が軽水炉提案準備

東芝傘下のウェスチングハウス(WH)社は7月23日、カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社がダーリントン原子力発電所サイトで進めている増設計画の入札で、2基のAP1000を提案するための詳細な建設プランや日程、および経費見積もり書を準備する方針だと発表した。最大でも90万kW級という規模のCANDU炉(加圧重水炉)のみが稼働するカナダで、初めて最新鋭の第3世代プラスの軽水炉が建設される可能性が出てきた。

建設許可や運転許可の前提となる「サイトおよびプロジェクト概要の準備に関する許可(SPL)」は年末までに原子力安全委(CNSC)が発給すると見られており、2018年の運開に向けて計画は大きく前進する見通し。WH社は今後、カナダの原子炉新設市場で一層多くの役割を果たし、同国の顧客および供給業者との連携を強めるため、トロントにウエスチングハウス・エレクトリック・カナダ社のオフィスを新設する。同国での事業チャンスが確実なものとなるよう、カナダの原子力規制や要件を適切に満たしていく考えだ。

カナダのオンタリオ州では総発電電力量の5割を州内の原子炉設備が発電。これを維持するため、州営電力として州内すべての原子炉を所有するOPG社は2006年、既存のダーリントン発電所(=写真)の4基に隣接して、最大4基・480万kWの原子力発電設備を新たに建設する「サイトおよびプロジェクト概要の準備に関する許可(SPL)」をCNSCに申請した。

しかしその後、州内の電力需要が低下し、その他の電源による発電量も増加したことから、原子炉を緊急に新設する必要性は低下。09年になると、OPG社と原子炉の運転会社であるブルース・パワー社、および州のエネルギー省は、既存炉のうちブルース原発とダーリントン原発にある1000万kW分の改修計画策定で合意。発電シェア50%の維持に必要な200万kW分についてはダーリントンに新設する2基で補うことになった。

同年2月にはOPG社らの招待を受け、仏アレバ社が欧州加圧水型炉(EPR)で、カナダ原子力公社(AECL)が改良型CANDU炉(ACR−1000)で、およびWH社がAP1000で提案書を提出。このうち、州政府の目的と「機器調達のための設計提案手続き(RFP)」の要件を満たしていたのはAECLのみだったが、価格面で折り合わなかったのと、同年5月にカナダの連邦政府がAECLの商用原子炉部門売却案を公表したことから、州政府は翌月にRFP手続きの一時中断を決めた。

CNSCによるSPL審査はその後も続けられており、昨年6月に国内の大手エンジニアリング企業であるSNCラバリン社がAECLの買収で連邦政府と合意。同年8月に共同審査小委員会(JRP)がダーリントンの増設計画について「周辺環境に悪影響が及ぶことはない」と勧告したのを受け、連邦政府も今年5月、同計画の環境影響報告書を承認する判断を下している。


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