関係国が追加検査実施 ベルギーの圧力容器亀裂問題で

今月初めにベルギーのドール原子力発電所3号機で圧力容器に毛髪状の亀裂が多数検知されて以降、同炉と同じくオランダのRDM社製圧力容器が使われている原子炉の保有国を含め、欧州諸国に波紋が広がっている。

スペインではコフレンテス原子力発電所(BWR、109.2万kW)(=写真)およびサンタマリア・デ・ガローニャ原子力発電所(PWR、46.6万kW)の2基でRDM社製の圧力容器を使用。複数の反原子力団体が審査のための停止を要求している。

同国の原子力安全委員会(CSN)は27日、これら2基の安全性を強調する一方、規制当局として今後、必要な確証検査を複数、実施する方針を発表。現在、すでに2基の圧力容器の製造プロセスやドール3号機関連文書の分析を行っているが、コフレンテス原発の圧力容器製造に使われた部材やプロセス、関連する暫定的なデータを見る限り、ドール3号機と同じ異常の発生は指し示されていないと明言した。

CSNによると、コフレンテス原発の圧力容器は半円筒の部材を垂直方向に溶接した組立て。一方、ドール3号機ではリング状の部材が水平方向に溶接されている。ドール3号機と同じ製造方法が採られたガローニャ原発に関しても、「圧力容器のサイズや厚み、容積、鍛造部材の数のほかに炉型もドール3号機とは異なる」と強調。PWRであるドールと同様の異常の発生は、BWRのガローニャ原発では推測し得ないとしている。

それでもCSNは、これら2基において異常発生の可能性を決定づける各種のパラメータや製造プロセス、圧力容器のその他の部分で実施した検査の結果について審査を実施。ベルギー連邦原子力規制局による一層正確なデータ分析の結果を待ちつつ、以下の点に関する確証検査を実施する。すなわち、(1)製造プロセスにおける出荷試験(2)使用された鋼材の特徴(3)米国機械学会(ASME)のコードに基づいて実施された検査結果――で、CSNとしても報告書をまとめる考えだ。

〈スウェーデンも定検時の検査数を増加〉

リングハルス2号機(PWR、91万kW)にRDM社製圧力容器が使われているスウェーデンでは、24日に規制当局が「9月15日から始まる燃料交換と保守点検のための年次検査で圧力容器の検査数を増加する」よう事業者のバッテンフォール社に指示。今後の改善に向けた行動計画を来年6月までに提出することも求めている。

〈仏国ではベルギーと同じ異常を検出せず〉

仏国ではRDM社製の圧力容器は採用されていない。が、ベルギーで発生した事象に関連し、仏原子力安全規制当局(ASN)は20日、これまでの仏国の原子炉検査で発見された類似の事象について「亀裂の種類や性質が異なるため比較できない」との見解を公表した。

仏国では1974年以降、圧力容器を含めたすべての機器に対して鍛造部の異常を検出する詳細検査を実施。さらに、圧力容器の高度に放射化された部分については10年毎に超音波検査を行っているが、ドール3号機と同様の異常は仏国の原子炉では検出されなかったと断言している。

仏国で検知された類似事象は以下の2種類。すなわち、(1)91年以降に実施された圧力容器底部・ステンレス鋼材による被覆部分の検査で、37か所の異常が2〜3の原子炉で検知された。このうち20か所はトリカスタン1号機の圧力容器だが、その後の検査でそれらは同炉の運転中にも拡大しておらず、広範囲の金属母材にも品質に影響を及ぼしていない。

(2)2011年9月にグラブリーヌ1号機の圧力容器底部、計測器を通す貫通部の溶接箇所で異常を検知したが、そこは応力腐食割れを生じやすい合金部分であり、事業者である仏電力(EDF)が短期的には無害である事を実証した上でその部分を使用停止とした。ASNは異常箇所を最終的に除去するための提案をEDFに要請済みである。


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