将来は原発建設も視野 カザフの原子力関係者が講演

旧ソ連邦のカザフスタンは2009年にウランの採掘量で世界第1位に躍り出るなど、その豊富な天然資源を背景に、近年は原子力発電所の建設事業までも含めた燃料サイクルの各段階で世界市場への参入を計画し、積極的な原子力産業多角化政策を進めている。すでに旧ソ連邦時代に建設された高速炉(BN-350)で26年間の運転実績があるほか、独立直後には国立原子力センター(NNC)も発足したが、原子力分野の設備製造産業や専門的な設計機関が存在しないなど問題点も多く抱えている。

経済産業省の委託により同国の原子力関連産業の人材育成支援事業を行っている一般社団法人・ロシアNIS貿易会(ROTOBO)は今月上旬、同国政府の原子力関係者など7名を研修のため日本に招聘。このうち原子力庁の専門家を含む3名が4日に都内で同国の原子力産業の現状を紹介する講演会を行った(=写真)。

100%国営原子力企業として1997年に設立されたカザトムプロムは同国の原子力産業戦略において中心的役割を担う存在。同社の戦略発展・国際プロジェクト局幹部は同社の今後の発展見通しについて以下のように説明した。

カザトムプロムの主要事業は、ウラン探鉱と天然ウラン採掘のほか、各種ウラン製品の生産、ベリリウム、タンタル・ニオブ製品の生産、電力・熱エネルギーの生産、工業用水と飲料水の生産と多岐にわたっている。傘下に抱えた関連企業73社の1つであるウルバ冶金工場では当初、原発用核燃料製造工場として年間300トンのUOウラン粉末、400トンの燃料ペレットを生産。ロシア型原子炉向けに出荷していたに過ぎないが、世界市場におけるウランの良好な販売見通しを背景に、今後はアジアにおける西側原発用燃料集合体製造センターとする計画だ。

同国ではカスピ海沿岸やバルハシ湖畔など6つのウラン鉱区に世界第2位のウラン埋蔵量が確認されており、天然ウランの採掘量は徐々に増加。97年から2011年までの間に9万2920トンが採掘されるなど、カザフは世界の天然ウラン需要量の約25%、採掘量の約35%を賄っている。09年に1万4000トンの採掘量でカナダを抜き、世界第1位になった後、11年には1万9568トンに到達した。このうち世界シェアの2割にあたる1万1079トンがカザトムプロムの生産量である。

このような採掘ウランの販路を多角化し、採掘以外の核燃料サイクル分野でも世界市場に参入するため、同社はロスアトム社と50%ずつ出資して「ウラン濃縮センター」を設立した。また、カナダのカメコ社とは「ウルバ転換会社」を設立したほか、仏アレバ社とは市場調査企業を設立。アレバ社とは燃料集合体製造会社についても合弁会社を設立準備中である。

さらに、原子力発電所の建設市場へも参入を計画しており、ロスアトム社と折半の原子力発電会社「KRKAS」を設立した。この事業が成功裏に実施された場合、カザトムプロムはロシア型PWRであるVVER300型炉の知的財産権へのアクセスを取得し、同設計による原子炉の海外販売で生じる利益の一部を得る事になっている。

このほか、海外との協力事業としては、レアメタル希土類採掘のために東芝と、レアアース製品の製造で住友商事と合弁企業を設立済み。このように、カザトムプロムはこの10年間で国内原子力産業全体の能力を著しく発展させてきたが、世界の原子力発電は21世紀半ば頃に熱中性子炉から高速中性子炉への移行が考えられるため、天然ウランの需要は2090年〜2100年に緩やかに下降していくと予測。こうしたニーズに合わせ、同社ではピークとなる2020年〜30年頃には年間2万5000トンのウラン生産を予定している。

こうした事情を背景に、政府はカザトムプロムの今後の戦略的発展方向を次のように制定。すなわち、(1)世界のウラン市場で主導的立場を維持(2)カザトムプロムを母体に海外資本と協力し、核燃料サイクル各工程に多角化した多国籍企業を構築(3)関連ハイテク分野への事業多角化と科学技術力の発展――である。

具体的には、天然ウラン販売市場で同社のシェアを2020年までに20%、カザフのシェアは30%まで拡大。UFへの転換技術で先進国企業と協力し、転換サービス市場に参入するほか、既存濃縮企業への参加を通じてウラン同位体分離サービスへの確実なアクセスを取得する。また、アジア地域にある西側設計原発への燃料集合体をカザフのウランで製造・供給。アレバ社やGE社、日立、東芝、ロスアトム社など先進企業による原子力発電所建設プロジェクトをカザフ産ウランでサポートしていく考えだ。


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