各国も日本の原子力政策を心配 原産協会

日本原子力産業協会の服部拓也理事長は9月27日、東京の事務所で記者懇談会に臨み、原子力を取り巻く国際情勢や、政府が取りまとめた「革新的エネルギー・環境戦略」についての意見を述べた。

同理事長は、9月にウィーンで開かれた国際原子力機関(IAEA)の総会に民間として出席し、諸外国の多くの関係者と会い、日本を思う人々は福島事故後、「日本は何をしようとしているのか。どこへ行こうとしているのか」、「本当に原子力をゼロにするのか」と心底心配していたことを紹介した。

革新的エネルギー・環境戦略についての意見では、エネルギーの安定供給は国家の根幹を支える基盤であることを強調し、「原子力という選択肢を手放すことは将来、国民に過大な経済的負担を強いるだけでなく、我が国の先進国としての国際社会に対する責任を放棄するもの」とした。

政府が検討した原子力発電比率では、「一定レベルの技術を維持して行くためには20%程度は必要。適切なレベルは20〜30%だろう」と述べた。

政府が現在考えている原子炉寿命原則40年の厳格な適用については、「古い炉と新しい炉では、安全裕度に違いがある。照射脆化、設計思想、確率論的炉心溶融頻度など科学的・合理的にきちっと判断できると思う」として、発電所ごとに評価し、「もし廃止するなら、なぜだめなのか理由をはっきりと示してほしい」と主張した。

なぜ日本が原子力発電比率を下げることに米国が懸念を示しているのかと尋ねられた同理事長は、8月に発表された米国の戦略国際問題研究所のアーミテージ・ナイ共著の報告書を引き合いに、石油価格の上昇や核不拡散を支える力が落ちるなどの危惧もあるかも知れないが、根本的には米国にとっても、「「最大最重要国」の日本が、国力を落とすことは、安全保障上の大問題」と考えているのではないかと解説し、「安全保障上のパワーバランスを考えることは政治の役割だ」とも強調した。

原子力発電所の再稼働問題については、「新しくできた規制委員会がきちっと安全基準を作って、判断することになる」としながらも、「新しい安全規制と言っても、まっさらなところに書くのではなく、ある程度のベースはあると思う。突拍子もない基準がでてくるとは思っていないし、それほど時間がかかるとも思っていない」とした。防災対策についても、「どこまで求められるのか。訓練までやらなければならないのか。これからの議論だ」とした。

原子力規制委員会については、「独立していなければならないが、孤立してはいけない」と述べ、「産業界とも、オープンな場で議論をする場が必要だと前々から言ってきている」と付け加えた。


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