国境越え、想いを1つに ウィーン 音楽を通じて福島支援

IAEA総会開催中の20日、広島在住のチェンバロ奏者である光井安子氏が企画した福島支援コンサートがウィーンの楽友協会(=写真)ブラームス・ホールで開催された。舞台裏を取材した。

(中村真紀子記者)

光井氏は「福島原発事故は未曽有の地震が引き起こし、不幸の連鎖により原子力発電最大の事故につながったもので、すべて企業の責任と軽々に結論を出せるようなものとはどうしても思えない。大変な事故だったにもかかわらず他の原子力事故のような急性被ばく者を出さずに原子炉もここまで冷却できたのは、当事者の方々の寝食を忘れたご尽力と日本の英知の結晶ではないか」と語った。これまでにも多くの平和チャリティーコンサートに携わってきた光井氏は、広島の被ばく者は長い間誰の責任と責めることもせず、自分の苦しみを政治化されることを忌み嫌って悲しみを心の奥深くにしまっていたことに触れ、声高に叫んでも何の解決にもならないとして、議論するより前に今苦しんでいる方々に世界から支援を送るべく開催を決めたと言う。「今こそ国境を越え、世代を超えて影響を及ぼす原子力発電や爆弾について、人類の知恵を絞って助け合い、グローバルな平和を考える時が来ているのでは」と力をこめた。

コンサートのオープニングはH.ラルビ氏の手による「松風」で、各国の演奏家が日本への想いをこめて共演した。日本在住経験もあるラルビ氏は、「ウィーンは音楽にとって特別な場所。シューベルト、モーツァルト、マーラーなどの偉大な音楽家たちが、苦しみながらも1つのことを成し遂げるために力を注いできた。原子力の問題に直面している福島の皆さんもこうした強い気持ちを原動力として立ち向かっていると思う」と声援を送った。この曲でフルートを演奏したミヒ・キム氏は、「音楽家は医者ではないが、精神的に人々の苦しみをやわらげることができると思う」と舞台での想いを語り、ハープ奏者のマルゴ・ヴァレ氏は「政治家たちは頭で動くが、我々音楽家は心で動く。心から訴えかけてくる1つになろうとする気持ちは誰にも止められない」と福島の人たちと音楽でつながっていきたいとの想いを訴えた。

このほか、パリ室内楽アンサンブル、ウィーン少年合唱団、男声合唱団コルス・ヴィエネンシス、ソプラノ歌手のイルディコ・ライモンディ氏などが出演した。広島から千羽鶴も届けられ、平和への想いを分かち合った。

ウィーン少年合唱団を指導し、演奏者たちの共演に携わったG.へール氏は「チャリティーは是非福島の子どもたちの学校に役立ててほしい」と語った。


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