【原子力ワンポイント】日本の放射線・放射能基準 −−福島第一原発事故〈番外編22〉 ガン増加は被ばくよりストレス原因説もトンデル博士は、低線量被ばくはガン促進を早めると推察していますが、ガンが増えた現象は一過性のため、ストレスによる免疫力の低下が原因であると考えられます。 ゲンくん チェルノブイリ事故の後、スウェーデン国内で事故の影響調査が行われたと聞いたけど。 テツにぃ トンデル博士の行った疫学研究のことだね。今中哲二・京大助教によると、「チェルノブイリ事故による放射線汚染レベルとガン発生率の増加に有意な関係が認められ、その原因として第一に考えられるのが、汚染にともなう低レベル放射線被ばくである」というのが、トンデル論文の結論になります。しかし、トンデル博士も今中助教も「チェルノブイリからの放射能汚染によってスウェーデンでガンが増えていることが“証明された”とは考えていない」そうです。 ゲンくん 放射能汚染が原因でガンが増えたとは証明されていないのに、どうして放射能汚染が原因と主張しているの。 テツにぃ 今中助教は、「スウェーデンでのガンの増加の原因はチェルノブイリ事故による放射能汚染である、と考えるのが最も合理的な説明であると思っている」と説明しています。これに対して、藤田京都府立医大名誉教授は、ガンの始まりから末期まで平均で25年程度の時間がかかることから、スウェーデンでのガンの増加の原因は、放射線によるものでなく、自然免疫が低下して、ガンが成長する進行期(ないし末期)にあったガン患者のQOL(生活の質)の悪化、病勢の急速な進行などが起こり、ガンの顕在化やガン死の増加として統計上現れてきたと推定しています。トンデル博士も放射線が原因で固形ガンになるには長い時間がかかるので、促進現象により、すでに存在したガンの病勢が早く進行したのではなかろうかと推察しています。 ゲンくん 藤田先生はガンを促進させた原因をどう推察しているの。 テツにぃ 最初の調査期間(1988〜1991年の4年間)、住人は自らの酪農産物の摂取制限はもちろん、市販も制限され、多くの人は元のコミュニティを引き払って退去・疎開を強制される機会も多かったと考えられ、これらのストレスが自然免疫の低下を招き、ガンの病勢を促進したと考えています。 ゲンくん ガン促進の原因をトンデル博士は放射能汚染だと考え、藤田先生はストレスによる自然免疫の低下だと考えているんだね。 テツにぃ そうです。ストレスを引き起こした根本原因は放射能汚染になるけど。ところで、除染のほかに問題解決型の思考をする場合には、ガン促進を防ぐためにストレスをためない工夫が考え出せます。山下福島県立医科大学副学長も、言葉が過ぎたと後で率直に反省していますが、2011年3月21日の『放射線と私たちの健康との関係』講演会で「放射線の影響は、実はニコニコ笑っている人には来ません。くよくよしている人に来ます」と言っているのはストレスをできるだけためない提案です。チェルノブイリ事故の6年後(1992年)からの増加分が最初の4年間に比べて大きく減少していることを考えると最初の4年間だけの一過性の現象と思われますし、トンデル博士も6年後からの8年間には、有意な増加はなかったと報告しています。 (原産協会・政策推進部) |
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