「安全は投資」クライン委員長 東電「改革監視委」 組織変革をチェック

東京電力の「原子力改革監視委員会」の初会合が12日、同社本店で開かれ(=写真)、廣瀬直己社長をヘッドとする特別タスクフォースから、福島原子力事故を踏まえた改革の方向性や、柏崎刈羽発電所における安全対策の取組状況などについて報告を受け、外部有識者らによる討議を行った。

同委員会は今後、規制改革、国際活動、リスク評価、倫理・緊急時対応の4分科会を設置し、各事故調査委員会で示された課題と対策強化の具体化に向け、少なくとも1年程度は継続し、東京電力の取組を指導していくこととなった。

同委員会は、東京電力の原子力改革の取組について、第三者の視点から監視・監督を行う取締役会の諮問機関で、「外部の目、外部の専門知識」を最大限活用する方針のもと、下河邉和彦会長他、デール・クライン氏(元米国原子力規制委員長)、バーバラ・ジャッジ氏(英国原子力公社名誉会長)、大前研一氏(ビジネス・ブレークスルー社長)、櫻井正史氏(元国会福島原発事故調査委員)をメンバーとしている。

冒頭、委員長に選任されたクライン氏は、「今後も原子力は世界のエネルギー供給に重要」との認識を示すとともに、東京電力の原子力改革に向けては、「聴きたくないようなことも言うかもしれない」などと、厳しく指導していく姿勢を見せた。

タスクフォースからの報告によると、原子力改革は、二度と福島の事故を繰り返さないよう、「世界最高水準の安全意識と技術的能力、社会との対話能力を有する組織」として生まれ変わることを目指し、「原子力トップ・マネジメントからの改革」との位置付けのもと、改革対象・範囲には制限を設けないことが基本方針に掲げられている。トップ・マネジメントからの改革は、(1)経営層からの改革(2)自ら率いる組織の改革(3)業務プロセスの改革(4)規制当局・立地地域・社会との関係の改革――の視点で改革プランを取りまとめ、これを経営層が率先して実行するものとしている。

経営層からの改革では、安全性向上のためのリーダーシップを自ら率先して発揮するよう、経営陣の備えるべき要件を明確化し、支えとなるスタッフ職の強化も図る。組織の改革では、米国の災害・事件現場などで標準化されたマネジメントシステム「ICS(Incident Command System)」の導入、システム全体を見る技術力の育成、深層防護の積み重ねができる体制作りなどを検討し、改革プラン策定に反映させていく。

また、柏崎刈羽発電所における津波対策、電源対策他、福島の事故を受けた安全性向上の取組状況も報告された。注水強化対策では、電源喪失や原子炉建屋の破損により、通常の使用済み燃料プールへの注水・冷却機能が失われても、バックアップできるよう、腕部最長70m級の超大型コンクリートポンプ車を年内にも配備する計画だ。

会合終了後の会見でクライン氏は、原子力事故の最大の原因を、「自然の猛威を過小評価した」と振り返り、事前の備えが不十分だったことを指摘し、「絶対に起きないと思うことにも対応できるよう訓練しておく」必要性を強調。怠ることで高い代償を払う結果になることから、安全は「コストではなく投資」などと述べた。また、「原発ゼロ」を目指した政府のエネルギー戦略について、70年代の石油ショックの経験に言及し、「どのような結末をもたらすか合わせて考えねばならない」などと、日本のエネルギー・セキュリティの重要性を指摘した。


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