インドと豪州、原子力協定交渉開始で合意 ウラン取引で双方に恩恵

インドとオーストラリアの両政府は17日、民生用原子力協力協定の締結に向けて交渉を開始することで合意した。インドが進めている大規模な原子力発電開発計画に対し、世界最大のウラン埋蔵量を保有する豪州がウラン輸出するための前提条件となるもの。インドへのウラン輸出がもたらすであろう経済的な恩恵はもはや無視できないとの判断に基づいている一方、平和利用の担保などで課題も残されている。22日には豪州で1989年以降、ウランの採掘を禁じていたクィーンズランド州政府が採掘再開の方針を発表。100億ドル規模と見込まれる同州の確認ウラン資源を州経済の成長に活用していく考えだ。

今回の合意は豪州のJ.ギラード首相(=写真左)がインドを初めて公式訪問したのに合わせ、両国が強化していくことになった様々な分野における協力関係の1つ。

インドのM.シン首相は記者会見で次のような声明を発表した。「ギラード首相率いる豪州の労働党政権は我が国にウランを販売するという政策を明確に打ち出した。これは我が国におけるエネルギーの必要性や、我が国が販売先として適格であるとの認識に基づくもので、豪州でのこうした展開に首相に深く感謝したい。具体的な取引に先立ち、両国政府は民生用原子力協定締結のための交渉開始で合意した」。

豪州政府はこれまで、核不拡散条約に未加盟のインドに対するウラン輸出を禁じていたが、2008年に米国がインドと原子力協力協定を締結して以降、インドとの原子力貿易が事実上解禁されるなど同国を巡る国際戦略は大きく変化した。

こうした外交状況の中で豪州の労働党政権は、2050年までに原子力による発電シェアを40%まで拡大することを計画しているインドへのウラン輸出により、豪州が享受することになる繁栄や雇用拡大などの経済効果は莫大だと判断。昨年12月に禁輸解除を含む政策綱領が党大会で承認されたのを受け、インドとの協力強化に向けた準備作業を行っていた。

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〈クィーンズランド州がウランの採掘再開へ〉

豪州自身は国内で原子力発電の開発利用を行っておらず、ウランの採掘と輸出を既存の鉱山に制限する「3鉱山政策」は2007年になって20数年ぶりに連邦労働党政府が廃止した。が、新鉱山の開発許可は実質的に各州政府に委ねられており、西オーストラリア州とクィーンズランド(QLD)州の2州はウランの「探鉱」を許可する一方、「採掘」については許可しない方針を貫いていた。

その後、08年になると西オーストラリア州政府が3鉱山政策を廃止。経済性のあるウラン資源が確認されている州で採掘を禁止しているのはQLD州のみとなったが、今年3月に同州の州議会選挙で勝利した自由国民党のC.ニューマン首相は今月22日、同州の天然資源・鉱山大臣との共同声明で、「3名の委員で構成する委員会の監督の下でウランの採掘を再開する」と宣言した。

現地報道によると、同首相は選挙公約として採掘再開の計画はないと明言していたため、一部から批判を浴びているが、声明の中では「連邦政府がインドへのウラン販売に道筋を付けた以上、QLD州もウラン産業の構築に成功した他州と同様、100億ドル相当という確認資源を経済成長や雇用拡大に活用すべきだ」との考えを表明。この決断の背景に一連の州民討論会や連邦政府によるウラン産業への強力な支援があった点を強調している。

また、同州内では原子力発電所の開発や放射性廃棄物の貯蔵を許可する計画はないと確約。ウラン採掘の監督委員会が3か月以内に状況報告書を州政府に提出予定であることを明らかにした。


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