ヨウ素剤投与基準等示す 災害対策指針 5キロ以内は避難と同時

原子力規制委員会は10月31日、国、地方自治体等が原子力災害対策を実施するのに必要な技術的事項を定める「原子力災害対策指針」を決定した。旧原子力安全委員会による「原子力施設等の防災対策について」(防災指針)に替わり、法令により策定が求められるもので、本指針を受け、関係自治体では地域防災計画の検討を行うこととなるが、今後、規制委員会での検討課題を残す形での記載となっており、継続的に改定を進めていく考えも述べている。

規制委員会では、安全委による防災指針見直しを受け、発足直後から、立地自治体や関係機関からのヒアリングを実施するなど、新指針の策定作業に取り組んできた。今回、決定された指針は、基本的事項、事前対策、緊急事態応急対策、中長期対策のそれぞれについて、必要最低限の事柄を取りまとめており、今後、詳細な検討が必要な事項として、(1)原子力災害事前対策(防護措置発動の判断レベルなど)(2)緊急時モニタリング等(3)オフサイトセンター(4)緊急被ばく医療(5)福島第一発電所事故への対応(6)地域住民との情報共有等――を掲げ、年内および年度末目途の2つのマイルストーンを設け、内容を充実させていくこととしている。

事前対策では、福島第一原子力事故の教訓を踏まえ、緊急事態の初期対応段階で、放出開始前から必要に応じた防護措置を講じておくため、発動のトリガーとなる判断基準として、施設の状態等で評価する「緊急時活動レベル」(EAL)と、環境における計測可能な値で評価する「運用上の介入レベル」(OIL)を設定し、これらに基づいて、迅速な意思決定のできる体制を構築すべきとしているが、具体的内容については、今後、規制委員会で検討の上で、記載することとした。

緊急時モニタリングは、発災直後から主に施設周辺で速やかに開始する「第1段階」と、より広い地域で実施する「第2段階」とに分け、様々な災害を想定し機能が損われないよう対策を講じておく必要を求めているが、モニタリング計画の策定、OILの変更手順、各段階で行う線量評価の手順などを今後の検討事項にあげている。

また、緊急被ばく医療については、設備・資機材、関係医療機関の連携、安定ヨウ素剤の投与判断基準、スクリーニングの技術的課題を検討事項としている。そのうち、安定ヨウ素剤の服用は、原子力災害対策重点区域に応じ、施設から概ね半径5kmを目安とする「予防的防護措置を準備する区域」(PAZ)で、即時避難と同時に投与の指示を行うものとしているが、副作用の可能性もあることなどから、合理的・効果的な防護措置が図られるよう、施設から概ね半径30kmを目安とする「緊急時防護措置を準備する区域」(UPZ)での服用については、さらに検討することとなった。

同日の委員会会合で、指針の骨子作成に主として係った中村佳代子委員は、「訓練を行い、うまくいかなかったり何かを見出した場合は見直す」などと述べ、本指針策定が原子力災害対策の充実に向けたスタートラインに過ぎないことを強調した。

また、終了後の記者会見で、田中俊一委員長は、「地域とやり取りをして実効的なものとしていく」などと述べ、今後、災害対策法上、関係自治体に求められる地域防災計画立案に関しては、地域からの協力も得て、1か月程度を目安にひな型を提示できるようにする考えを示した。


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