原子力委員会の役割を評価 見直し有識者会議 年内取りまとめ目指す

政府の「革新的エネルギー・環境戦略」決定を受け、原子力委員会のあり方を抜本的に見直す有識者会議が10月31日に、初会合を行った。年内までに、5回程度の会合を開いた上、エネルギー・環境会議に諮り、見直し案を取りまとめる運び。座長は、日本学術会議会長の大西隆・東京大学工学系研究科教授(=写真)。

新たなエネルギー戦略では、「原発に依存しない社会の実現」を掲げ、新たな原子力政策を、エネルギー・環境会議の場を中心として確立することとしており、その文脈の中で、平和的利用の確認などの機能に留意しつつ、原子力委員会の見直しを述べている。6月末に示されたエネルギー・環境戦略に向けた「選択肢」提示の段階では、同委員会に、年内の「原子力政策大綱」策定が求められていた。

初回会合では、内閣府より、日本の原子力研究開発利用の曙ともいえる原子力委員会発足の背景と、その後の活動を、「第1期」(1950年代〜70年代後期)、安全規制機能を分離してからの「第2期」(70年代後期〜90年代末)、「もんじゅ」事故などを経た後の「第3期」(90年代末〜)に分けて整理し、それぞれ担ってきた役割について説明した。同委の重要な役割の1つとして、原子力開発利用長期計画は、56〜00年に計9回策定されている。会合は非公開で、議事・配布資料については事後、国家戦略室のウェブサイトに公開されるが、今回、内閣府が説明に際し用意した資料は、これまでの原子力政策の変遷を、時代背景や主要な出来事、そこに関わった人物名などとともに簡便にまとめており、一読することで日本の原子力研究開発利用の黎明期から現在までを概観できる。

出席した前原誠司・国家戦略相は、進まぬ放射性廃棄物処分問題、福島被災地住民の長期化する避難生活など、原子力を巡る課題を憂慮しながらも、「原子力政策をしっかりやっていくための考えをまとめる組織は今後も必要」などと述べ、有意義な議論が行われることを期待した。

第2回会議は6日に開催され、近藤駿介・原子力委員長、原子力規制庁のヒアリングを行った。

近藤委員長は、原子力委員会の取組の現状について説明した。同委員会の任務として、原子力の研究、開発及び利用に係る行政各部の施策の統一を図るために必要となる安定性のある基本方針を企画、審議、決定することなどを挙げたが、原子力政策大綱のような包括的基本方針の策定には相当の事務局機能が必要であるため、現在の行政体制では不可能であることを指摘した。

規制庁は安全規制の観点から、平和利用の役割を担うための何らかの行政組織が必要だとした。

第3回会議の開催は13日午前の予定。


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