「事故前より安全性向上」 天野氏が国連総会で報告

国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は5日、ニューヨークで開催されていた国連総会本会議に「福島事故後に世界各国が取った新たな緊急時対策等により、原子力発電所の安全性は事故以前より一層向上した」とするIAEA年次報告書を提出した。今後もアジア地域を中心に原子力の開発利用は着実に増大するとの予測を改めて表明しており、同事故後も世界が原子力を必要としているという事実は変わらないとの見方を強調している。

同事務局長はまず、国際的な原子力安全に関わる様々な分野でIAEAが陣頭指揮を執ってきた事実に言及した。その結果、津波や地震など極端な自然災害に対する防護改善で加盟各国が多くの対策を取っており、緊急時対応策や対応能力が向上。IAEAの専門家によるピアレビュー・サービスも拡大していると説明した。

次に、福島事故の概略と事故後に世界中で高まった反原子力運動について触れ、こうした事実にも拘わらず「世界の原子力発電施設は今後20年間に緩いペースで着実に増強される」とするIAEAの最新予測を紹介した。

この予測は9月のIAEA総会で公表された「2050年までの世界の原子力発電設備容量に関する報告書」に示されたもので、福島事故後も途上国を中心に原子力への関心が薄れることはなく、原子力設備は継続して増加していくと分析。同事務局長は特に、中国やインド、韓国などのアジア地域、ロシアで大規模な設備拡大が計画されている点を強調した。


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