東電 再生への経営方針 事故対応抱え自由化に危機感 賠償・廃炉の責務果たす決意新たに 電力システム改革先取りし分社化

東京電力は7日、取締役で決定した「再生への経営方針」と、それに基づく中期経営計画「改革集中実施アクション・プラン」を発表した。「再生への経営方針」は社外取締役を中心にトップダウンで取りまとめたもので、福島事故を受けて東京電力が企業として賠償、廃炉、電力の安定供給の3つの基本事業を継続して遂行していくために、「事業優先度を大胆に組み替えていくことが必要と判断した」(下河邉和彦会長)もの。今後の賠償、除染、廃炉、人材流出などを考慮すると、「一企業のみの努力では到底対処しきれない」との危機感も最大限につのらせており、来春にも現行総合特別事業計画の見直しを要請している。発送電分離などの電力システム改革を先取りして、社内分社化なども行う方針を打ち出している。

2013/14年度を対象とする「再生への経営方針」では、「事故の責任を全うし、世界最高水準の安全確保と競争の下での安定供給をやり抜く」との強い決意を示し、「社会の信頼を回復していく」としている。現在検討が行われている電力システム改革で、電力完全自由化や発送電分離なども念頭に入れながら、「当社としても、数年後にも予想される自由化時代に的確に対処していくことが愁眉の急となっている」と指摘している。

また、このまま賠償・除染・廃炉の負担が「青天井」で膨らんでいけば、現在の原子力損害支援機構法の枠組みの中で、交付国債枠5兆円を倍増し10兆円にして対応することになれば、巨額の負担金を超長期にわたって支払うためだけに存続する「事故処理専業法人」になるか、公的資本を数兆円単位で追加注入し、我が国の電力市場全体の3分の1を占める最大の電力事業者が国営の「電力公社」と化した状態において、電力市場の完全自由化を進めるという「極めていびつな構造となる」と指摘している。

今後の「あるべき『企業の形』」としては、「世界的にみても、電気事業は、今後の経済成長を左右する基幹インフラであることは論をまたない」とした上で、事故処理専業法人や電力公社となった場合、「エネルギー事業者として自由化に対応し、国民・利用者のニーズに応えていくことはもとより、当社固有の社会的責務(賠償、廃炉)を果たしていくことも困難な事態に陥ることは必至」と訴えている。

現行の総合特別事業計画は「破綻しつつある」(下河邉会長)との認識から、原子力損害賠償機構法や原子力損害賠償法の改定を求め、電力システム改革や民主党政権の30年代に原発稼働ゼロ方針などの新たな事業環境の変化への対応などを盛り込んだ「より包括的な新たな計画を策定するよう、関係者に要請をしていきたい」としている。

改革集中実施アクション・プラン(AP)では、具体的に71の計画を策定し、(1)国際原子炉安全研究センター、モックアップセンター/機器装置メンテナンスセンターの設置(2)4号機使用済み燃料取り出しの前倒し(3)福島復興本社の設置(4)世界最新鋭の石炭火力発電所、Jヴィレッジの復興などの検討開始(5)現場を重視した原子力部門への組織改編(6)分社化による社内カンパニー制の導入(7)燃料・火力、送変電、配電、販売、コーポレートの6分野ならびに事業所単位によるきめ細かなコスト管理──などを実行するとしている。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで