「原子力安全推進協会」が発足 代表に松浦元安全委員長、理事長に藤江氏 独立した専門集団標榜 原技協を発展的に改組

東京電力・福島第一原子力発電所事故から1年9か月、原子力業界の総力を挙げて炉心溶融などの重大事故防止や新たな原子力安全向上策を検討する一般社団法人「原子力安全推進協会」(=原安進、JANSI)が15日、発足した。電力会社やメーカーなどで構成し、いままで原子力施設の相互安全レビューなどを行ってきた日本原子力技術協会(藤江孝夫理事長)を発展的に解消し、「より高度な安全性を目指して、事業者を牽引していく組織」にすることを目指し、「代表」に松浦祥次郎・元原子力安全委員長が就任、理事長を藤江氏が務める。

新組織は、1)技術評価において電力会社などの事業者の意向に影響されない独立性の仕組み・体制を構築2)事業者に対して客観的に評価、提言・勧告を行う──ことなどによって、事業者が主体的に行う原子力安全性向上活動の支援を行うことで、事業者が独りよがりに陥ることを防ぎ、我が国全体の原子力安全レベルを引き上げていくことを目指す。

技術評価の独立性を確保し、安全確保への強いリーダーシップを発揮するために、事業者の全社長が出席する「事業者社長会議」を発足させ、原安進代表が直接、各社長に提言・勧告を行い、改善策実行の約束を引き出す仕組みを構築する。また、その提言・勧告を受けた社長だけでなく他の社長も課題を共有し、お互い切磋琢磨することで業界全体としてのレベルアップを図る。

さらに、海外との連携も強化し、海外専門家を迎え、提言・勧告のレビューを受けたり、日常業務でも意見交換を行い、世界原子力発電事業者協会(WANO)等の海外機関の最高責任者クラスからなる「国際アドバイザリー委員会」の設置も行う。

いままで原技協が行ってきたピア(相互安全)レビューは、レビューを行う担当者の個人的力量に基づくことが多かったが、今後は組織的に行う方針。また、原子力施設に対して連絡代表者を決めて定期的に派遣し、施設幹部とのコミュニケーションも深め、良好事例の紹介などを通じて、安全確保のレベルアップを図る。

新組織設立総会後の臨時理事会で代表に就任した松浦氏は記者会見(=写真)で、「新協会は、たゆむことなく努力する独立したプロフェッショナルとして活動していきたい」と抱負を述べた。また事業者との関係は、「自分たちの過去の活動を反省し、安全性を高めるためには自分たちの要求に左右されないような組織を作らないとダメだという決心をされたからだと私は考えている」とし、「適切な安全評価を行い、提言を実行することが何より重要だ」と決意を語り、「そのためには経営トップのコミットメントを非常に重視したい」と語った。

記者会見に臨んだ八木誠電事連会長は、「独立した立場と強い指導力のもと、国内外の安全性向上に関する最新知見を収集・分析し、事業者の安全性向上活動を技術的に評価するとともに、提言や支援などを通じて事業者の活動を強く牽引していただけるものと期待している」と述べた。

新協会は、設立に伴い事務所を12月から以下に移転する。〒108―0014東京都港区芝5丁目36番7号 三田ベルジュビル13〜15階。電話03―5418―9312(代表)。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで