B&WのSMRを選定 米国のSMR開発支援計画

米エネルギー省(DOE)は20日、バブコック&ウィルコックス(B&W)社が開発中の小型モジュール炉(SMR)「mPower」を米国政府が商業化支援する2設計の1つに選定したと発表した。B&W社はテネシー峡谷開発公社(TVA)およびベクテル社と設立した開発チームにより、受動的安全系を備えた出力18万kW規模の地下建設式・一体型PWRの開発を進めていく。DOEはまた、支援対象とする残りの1設計についても、年末までに選定すると見られている。

SMRは大型炉と比べて工期が短く建設価格も手頃なことから、米国では小規模の電力会社からのニーズを見込むメーカー各社がSMRを開発中だ。連邦政府も「米国人が米国の技術でクリーンエネルギーを作り、世界に輸出する」という基本コンセプトの下、今年1月にSMRの開発に関する資金提供公募(FOA)案を発表。民間とのコスト分担により2022年までに2設計の営業運転を目指すというプログラムで、DOEは3月末、米国SMRの初号機エンジニアリングや設計認証および認可を支援していくため、4億5000万ドルの支援提供を約束していた。

省内にはこの件に関する長官の諮問委員会(SEAB)が設置されており、同プログラム以降の作業についてDOE長官から、1)米国が民生用原子力分野でリーダーシップを取れるようなSMRの安全性や核不拡散性の基準となる分野を特定せよ2)商業化における課題や不確定要素、リスクを特定するとともに、そうしたリスクへの適切な対応方法や開発を加速するための政策的な助言を提示せよ――との指示を受けていた。

SEABはFOAの設計選定手続きとは直接関わりはないものの、16日に審議した長官宛て報告書案の中で、これらに対する調査結果を次のように説明している。すなわち、1)SMRには安全上、いくつかの新しい課題が見受けられるが、米原子力規制委員会(NRC)では標準的な低濃縮ウランを燃料とする軽水炉型SMRの設計、認証・許認可手続きの適用を準備していると思われる。

NRCの許認可は一般的に、国際的な安全規制を代表する存在と見られており、米国SMRの認証・許認可支援プログラムが上手くいけば、民生用原子力分野で米国のリーダーシップ促進につながるだろう。また、低濃縮ウランを使用する軽水炉は保障措置を適用し易い構造であり、国際的な核不拡散基準を満たすことも可能と考えられる。

2)SMRの商業化における主要リスクは「安全確保で妥協することなく、天然ガス火力や次世代の大型原発などの代替案より発電コストを安くできるか」という点。また、プログラム終了後も開発を継続する判断を下した場合、成功を約束できる規模で政府が投資を行うべきだ。米国政府は直接的、非直接的にも多くの支援手段を有しており、中途半端な施策は結局無駄に終わるだろう。

こうした状況から、SEABは低濃縮ウランを使う軽水炉型SMRの開発と建設を非常に有望視する一方、SMR産業の構築には長期的な努力と米国政府の継続的な支援が必要だと結論づけた。

また、SMRの商業化には不確定要素が数多く残されているため、DOE長官が政府の統一的なSMR戦略を構築し、必要に応じて改訂していくよう勧告している。


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