[原子力産業新聞] 2012年11月22日 第2648号 ＜4面＞

強度レーザー光に優れた耐性　島津製作所　ミラーおよびコーティング開発

島津製作所はこのほど、日本原子力研究開発機構量子ビーム応用研究部門と共同で、世界最高クラスのレーザー耐性を持つレーザーミラーおよび高耐力ＡＲコーティング（反射防止膜）を開発したと発表した。

アモルファス（非晶質）膜である誘電体多層膜に高強度なレーザー光が照射されると、誘電体多層膜の結晶化が進み、結晶化された部分から順次破壊が起きることを発見した。結晶化しにくいアモルファス膜ほど高強度のレーザー光に対して優れた耐性を有するという研究成果を元とし、成膜中の多層膜に酸素イオンを照射する技術の導入および多層膜の成膜スピードなどの条件の最適化により、結晶化しにくい誘電体多層膜の成膜技術の開発に成功した。さらに、最適な多層膜材質を選定し、独自の設計手法を駆使して、反射率・面精度・表面品位を備えた世界最高クラスの耐性を持つレーザーミラーを開発した。こうした一連の技術により、レーザーミラーだけでなく、従来の２倍の耐性を持つ高耐力ＡＲコーティングを得ることができた。

レーザーミラーは、レーザー光を発振させるための共振器を構成しており、発振したレーザー光の伝送・制御に必要となる。そのため、光の吸収・散乱が少なく、極めて高い反射率をもつ誘電体多層膜が用いられているが、高強度のレーザーで使用すると、熱や電界などの衝撃で誘電体多層膜が破壊されて機能しなくなってしまう問題点があった。近年、医療分野でのＸ線ビームの発生、理化学分野での感度の高いレーザー計測実現のため、高強度のレーザーが求められている。

同レーザーミラーは、原子力機構・関西光科学研究所で実施中の文部科学省公募型プログラム「最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点（平成２０‐２９年度）」で現在、研究開発中の「高出力ＴＨｚ波発生光源（ＱＵＡＤＲＡ−Ｔ）用のドライバーレーザー」で使用されるレーザーミラー等の光学素子に採用されている。

お問い合わせは、情報・コミュニケーション部（03-6812-7103）まで